もしもし、そこの加蓮さん。
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236:名無しNIPPER[saga]
2020/05/10(日) 14:34:24.73 ID:7gnP6kF90


 「――ねぇ!」


風切り音とヘルメットに阻まれて自信はありませんでしたが、
背後の奏がそう叫んだように聞こえました。

 「なに!」

 「まるでロード・ムービーみたいじゃない? 本当に……痛快だわ!」

 「イージーじゃないよこれぇ! ハンドルおっもい!」

車一台も通っておらず、信号の一つも灯っていない山の手通りを、
病院の駐輪場から失敬してきた二人乗りのオートバイが駆け抜けて行きます。

パジャマにヘルメットで叫び散らす少女達は、
百人が見れば百人が指を差して嘲る滑稽な姿でした。

ですが今、二人を見つめているのは物静かなお月様だけです。


 「寄り道していいーっ?」

 「加蓮、何か言ったー?」

 「寄り道していいかってー!」

 「何処へでもー!」


加蓮が急ハンドルを切ると、
二人分の悲鳴を生贄にして、奇跡的なドリフトが決まりました。


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