【オリジナル】自殺したら僕だけを誉めない有名絵師の彼氏になった件
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62: ◆wqJOdKDc/.
2020/04/25(土) 10:38:42.82 ID:U1qw9Qt5O
「おはよ、凛」
「おはよう、ゆ、悠……」

TERIAさんを本名で呼ぶのには、凛さんになって五か月経った今でも慣れそうになかった。

「大丈夫? 緊張してる?」
「ま、まあそれなりにな。お手伝いとサークル参加とじゃ、また別だしな」

いいえ、全然緊張していませんが。
なんだかんだでサークル参加は、アシカ太郎時代を含めて二回目。そこまでドキドキしちゃいない。

「はい、合同。凛と……彼のもちゃんと載ってるから」

先ほどの誰でも合同2ほど分厚くはないが、ずっと夢にまで見た品を手渡されて。
また男泣きしてしまった。

「ううっ……悪いな、情けない彼氏でさ」
「いいっての……きっと彼も、喜んでくれるよね……」

人の噂も七十五日とは違うが、人は徐々に死の痛みさえ忘れる生き物だ。
TERIAさんにとっては、アシカ太郎こと佐藤等を自殺へ追いやったことを。
僕にとっては、TERIAさんの彼氏である白井凛さんの身体を乗っ取ったことを。
それでも、犠牲になった人を悼む気持ちは、ずっと心の奥底にあって。
それが僕達を人間たらしめている核なのかもしれない。

「……たぶん、な」

佐藤等の心に巣食っていた、彼女やそのお気に入り達へ抱いていた数多の黒い感情。
それらはもう、どこかへ消えてしまっていた。

一通り知り合いのスペースへ挨拶回りを終え、僕は自分のスペースへ戻った。
その直後で、彼女があるツイートをしたのだ。

@Terianoww『昨年八月のオンリーイベントにおいて、痛ましい事件があったこと。私は決して、忘れてはいません。参加者の皆さん、どうか他の参加者への思いやりの気持ちを忘れないで下さい。みんな、同じ作品が大好きな仲間なのですから』

「ありがとう、TERIAさん」

誰にも聞こえないほどの小さな声で、そう独り言ちた


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