荒木比奈「何百回目のプロポーズ」
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12:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/30(月) 23:12:44.30 ID:nJ12rVXd0
「……」
「……」
「…………比奈」
「……はい?」
「いいか?」
「ん?」
「プロポーズ」
「あ、……はい。えっと、お願いするっス」
「……手は」
「このままで」
「分かった。じゃあ」
「あ、あと」
「うん?」
「もうちょっとだけいいっスか? 詰めても」
「いいけどキツくない? もうこんなくっついてるのにこれ以上」
「いーんスよ。そういうもんなんスから」
「そういう?」
「恋人なんだからってことっスよ。愛し合う大好き同士」
「いや比奈……。……ああまあそうか、プロポーズするんだもんな」
「でスでス。大切にしなきゃいけないんスよ、設定は」
「はいはい了解。……ほら、おいで」
「へっへー……。……ん、ふふっ、ぎゅぎゅっと密着っスー」
「これでいいか?」
「オッケーっス! ささっ、お願いしまっス」
「そんなふうに促されるとやりづらいんだけどな……。まあ、それじゃあ……」

 んっ、こほん。
 照れの滲む表情を浮かべながらプロデューサーが一つ小さな咳払い。
 改めて向き直す。一度閉じ、それから開いた瞳を真剣な色に染めて。まっすぐ私と向き合った。まっすぐ私と見つめ合う。
 それからゆっくり口を開く。優しい声。そっと大切に手渡すように、語り聞かせ染み込ませるように、温かな優しい声でプロデューサーが言葉を紡ぐ。比奈、と。私の名前を呼んでから。


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