荒木比奈「何百回目のプロポーズ」
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10:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/30(月) 23:11:23.15 ID:nJ12rVXd0
 ドライに、とか事務的に、とか。そんなのきっと冗談なのは分かっているけど。でもそれに悲しくなって。苦しくなって。……無いとは確信していても普段から時々頭に過る、綺麗で可愛い女の人がたくさん行き交うこの事務所の中に居るとどうしても考えてしまうことのある嫌な想像を言葉にされて、ついむっとしてしまった。
 分かっていること。分かられていること。本音を思わず漏らしてしまう。

「あーまあ……そうだな、それじゃあその、分かった。言うから」

 これまでにも何度も。……気持ちを隠して装う、とかそういうのがそんなに得意でもない私がこれまでにも時々、いろんな時いろんな場所で何度も漏らしちゃってたのと同じように、今もまた少し漏らしてしまった飾らない本音。それを聞いて、プロデューサーの目が泳ぐ。
 そういえば久しぶりだったかもしれない。こうして隠せず漏らしてしまうのは。だからなのかプロデューサーの反応が可愛らしい。間接キスを意識したときと同じような、あれよりももっと滲み出た緩んだ顔。
 漏らしてしまったのは自分もなのに。自分のほうが先で、しかももっとずっと駄目なのに、それなのにまた胸へ愛おしさが込み上げる。言っちゃった。失敗した。そんなことへの後悔や照れなんかより、今この目の前のプロデューサーへの想いに溺れてしまう。
 まあどうせお互いに分かっていること。承知の上で知らん振りをしてること。だからいいや。体裁を取り繕うのはプロデューサーに任せればいい。そういう面倒なのはもうやめちゃおう。
 そんなふうに吹っ切れる。前にもあったみたいに。堪え性が無いなあ、とも思うけど、まあこれが私だし。私をこんなふうにしたプロデューサーがそもそも悪いんだし。だからいいや。もういいや。


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