27:名無しNIPPER[saga]
2020/03/26(木) 00:08:41.09 ID:E3bwfHu30
「そこまでだ。」
それは一瞬だった。冨岡さんは俺の腰元にあった刀を抜くと女将さんに向けて刃を向けた。
余りにも一瞬だったので俺は思わず女将さんに赤ん坊を渡さずになんとか庇った。
「冨岡さん何をしているんですか!」
「よく見ろ。母親の口から涎が垂れている。」
その指摘通り女将さんの口元から大量の涎が垂れていた。
そうか、生まれたばかりの子供は羊水と血で混じり合っているんだ。
さらに女将さんは出産を終えて体力を消耗しているからかなりの飢餓状態に陥っている。
残酷だけど鬼と化した女将さんにしてみればこの赤ん坊は目の前にあるご馳走も同然だ。
「今の母親に子供を渡せばたちまち食い殺されるぞ。そうなることをお前たちは望むのか。
そして炭治郎、俺が出来る譲歩はここまでだ。この先は鬼殺隊の隊士として行動しろ。」
その言葉を受けて俺はこの場を冨岡さんに任せると家の戸を開けて外へと出た。
外に出ると夜が開けてまもなく朝日が昇ろうとしていた。
俺はまだ産声も上げない赤ん坊にこの朝日の光を照らそうとした。
この子が鬼だったら朝日の光で身体が消滅する。けれど人であれば生きていられる。
これはそういう生き実験だった。
「どうか頼む…人であってくれ…」
これより昇る朝日に向かってそう願った。
もうこれ以上の悲劇を与えないでほしい。この子の人生の門出が祝福されるものであってくれ。
そう願った矢先だった。
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