28:名無しNIPPER[saga]
2020/03/26(木) 00:16:17.50 ID:E3bwfHu30
「 「おぎゃぁぁぁぁっ!」 」
朝日に照らされて赤ん坊が産声を上げた。子供は日に照らされても消滅しなかった。
よかった、鬼じゃなかったんだ。本当によかった。
これでこの子が人であると証明された。俺は急いで家の中に戻った。
そして母親の女将さんにこの子を抱いてもらおうとした。けれど…
「そんな…どうして…」
家の中に入るとなんと女将さんが戸の前に立っていた。
何をやっているんだ!鬼のあなたが太陽に晒されたら消滅してしまうんだぞ!?
「あぁ…何でこんなことを…」
「ごめんなさい。けどもう決めたことなの。」
それは先程の行いが原因だった。我が子を前にして食欲を抑えられない鬼の母親は最早子供にとって害でしかない。
だから消滅しなければならないのだと…
そして光を浴びたことで徐々に女将さんの身体が消滅していった。
「お願いです…せめてこの子を抱きしめてくれ…」
俺はなんとか子供を抱いてほしいと頼み込んだ。
けれど女将さんは無言で首を振った。まるで人殺しの自分には無垢な我が子を抱く資格などないといっているように思えた。
あぁ…もう駄目なんだ…
そして女将さんの身体が完全に消滅する寸前だった。
「生まれてきてくれてありがとう―――
最期にそんな言葉を遺して女将さんは消えた。
赤ん坊は自分の母親がこの世から消えたことなど何も知らない。
けれど俺は確かに見た。女将さんが消滅する寸前、微かに赤ん坊の頭を撫でたことを…
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