26:名無しNIPPER[saga]
2020/03/26(木) 00:07:43.44 ID:E3bwfHu30
「ハァ…ハァ…」
女将さんの体力が限界に差し掛かっていた。
いくら鬼でも出産にはかなりの体力を消耗するようだ。
そのせいでこれ以上力むのは困難だった。
「旦那さん!行きますよ!」
「ああっ!頼む!」
それから俺と旦那さんの二人掛りで子供を引っ張り出そうとするが…
やはり駄目だ。単なる力任せじゃないからその力加減がかなり厳しいところだ。
もう時間が迫っている。どうしたら…
「急げ。」
そんな時、戸の前にいた冨岡さんが俺たちと同じく赤子を引っ張ろうとしていた。
言葉こそ足りないが冨岡さんも必死に取り上げてくれている。
その想いが伝わったのだろうか赤ん坊の身体がみるみる胎内から出てきた。
よし、いいぞ!この場にいるみんながお前の誕生を望んでいる!
だからお願いだ。どうか無事に生まれてきてくれ!
「出たッ!生まれたぞ!」
そして遂に子供が生まれた。それも女の子だ。
けれど…産声が聞こえない。第一声が発せられないなんてどうして…
まさか死産ではないのか。
「あぁ…赤ちゃん…」
そんな不安な空気の中で出産を終えた女将さんが赤ん坊を抱こうとした。
いくら鬼と化したとはいえ生まれてきた子を慈しむのは母親として当然だ。
俺歯女将さんの腕の中に赤ん坊を渡そうとした。
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