31:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:55:23.74 ID:z07AMiQQO
「でも珍しいね。おねーちゃんがラーメン食べたいって」
「そういう日菜もじゃない。どういう風の吹き回し?」
32:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:55:50.52 ID:z07AMiQQO
食というのは不思議なものだな、と紗夜は思う。
美味しいものを食べている時は、難しい悩みごとも、忘れたいことも忘れたくないことも、意識の外に置いておける。世界平和が訪れる。今であれば、どんぶりに咲く一輪のチャーシューとネギととろろのコラボレーション以外に何もいらないという気持ちになれる。穏やかに日菜と向き合える。ラーメンというのは奥深い食べ物なのね。
33:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:56:32.55 ID:z07AMiQQO
――『今週のおねーちゃん』とは、パステルパレットのインターネット配信番組の中で、日菜が受け持つレギュラーコーナーである。紗夜がパステルパレット関連のものはあまり目にしないのをいいことに、日菜が紗夜の素晴らしさを色々と脚色しながら滔々と語る10分間である。
そのコーナーは、日菜が紗夜の写真を視聴者に見せるところから始まる。その写真も、その週に撮って『るんっ♪』ときたものが使われている。
34:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:57:03.28 ID:z07AMiQQO
「はい、ネギとろチャーシュー、お待ち!」
そんなことは知らぬが仏、紗夜の目の前には恋焦がれたラーメンがやってきた。お腹が『くぅ』となる。そいつを早く寄越せとせがんでくる。
35:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:57:31.53 ID:z07AMiQQO
目を細め、噛みしめるように最初の一口を飲み込んだ紗夜に、日菜はスマートフォンのカメラを向けていた。ラーメンを味わう、いつもとは違った、なんだか無防備で可愛げのある姉の姿を写真ではなく動画に収めていた。
日菜の前にも、もうラーメンは運ばれてきていた。だけど彼女はまだ食い気より姉。ラーメンより紗夜だった。
36:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:57:59.53 ID:z07AMiQQO
「おねーちゃん、ラーメン、好き?」
その激流に身を任せるうちに、ひとつの案を思い付いたから、日菜はそう紗夜に尋ねる。
37:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:58:27.42 ID:z07AMiQQO
『おねーちゃん、あたしのこと、好き?』
『そうね。好きよ』
38:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:59:13.99 ID:z07AMiQQO
「あたしも大好きだよ、おねーちゃんっ!」
「そう。やっぱり日菜は私の妹ね」
39:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 23:00:07.53 ID:z07AMiQQO
参考にしました
壱発ラーメン ippatsu.co.jp
D4DJ両日、アルゴナビス両日、メラドと、全てのライブで最速先行にてチケットが当選しました。コロナウイルスはさっさと終息してくれないかなぁと願う日々です。
40:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 23:41:40.56 ID:z07AMiQQO
おまけ
氷川紗夜「双子葉」
41:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 23:42:25.93 ID:z07AMiQQO
冬の終わり、もうすぐ春になろうという三月の夜の空気は、どこか懐かしさを孕んでいるような気がした。自室の窓から外を眺めてそんなことを思ったのは、もう間もなく十代に別れを告げるからだろうか。
壁にかけた時計の針は、十時を半ば過ぎたところを指している。三月十九日と十九歳の夜がもうすぐ終わる。九十分後の三月二十日には、私は二十歳。名実ともに『大人』に分類されることになる。
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