41:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 23:42:25.93 ID:z07AMiQQO
冬の終わり、もうすぐ春になろうという三月の夜の空気は、どこか懐かしさを孕んでいるような気がした。自室の窓から外を眺めてそんなことを思ったのは、もう間もなく十代に別れを告げるからだろうか。
壁にかけた時計の針は、十時を半ば過ぎたところを指している。三月十九日と十九歳の夜がもうすぐ終わる。九十分後の三月二十日には、私は二十歳。名実ともに『大人』に分類されることになる。
ふぅ、と息を吐き出して、ベッドに腰かけた。それから顔を動かして、部屋の隅に置いてあるギタースタンドへ目をやる。
紺色のボディ。十代の日々を、劣等に苛まれた鬱屈を、大切な仲間たちと手に入れた栄光を、数えきれないほどの喜びと悲しみを、青春を共にした、M‐U。「色々あったな」では済まされない色々の一つ一つが、その各所には刻み込まれている。こんなノスタルジックに浸された夜にはそれがやけに顕著だ。
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