11:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:40:00.00 ID:z07AMiQQO
そんな風に窓の外を眺める紗夜を遠巻きに見つめる影がふたつあった。名もなき生徒会役員と風紀委員である。彼女たちの思いは同じだった。
――いつも凛々しくまっすぐ未来を見据えるその眼差しが、今日はどこか遠くへ向けられている。ちらりと窺える横顔には愁眉。きっと何か貴い物思いに耽っているに違いない。昨今の世界情勢だろうか、貧困に喘ぐ国の子供たちの未来を憂いているのだろうか、それとも、わたくしたちのような下賤の身では到底思い至らない宇宙の真理に想いを馳せているのだろうか。風にそよぐカーテンと揺れる陽射しに照らされたその姿は、まるで一枚の絵画だ。イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢にも負けず劣らずの肖像だ。ガールズバンド時代が生み出した高貴な青薔薇の花……ああ、なんて素敵なんだ。それを手が届きそうな距離から見守れる以上の幸福がこの世界にあるだろうか? いや、ない。あるわけがない――なんて、そんな風に紗夜の姿に見惚れて、やんごとなき憧憬と尊敬と情熱を込めたため息を揃って吐き出す。
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