14: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/03/06(金) 21:03:43.05 ID:hr1ls1V9o
「……」
「……」
沈黙。
「……えっと……」
こう言う時、なんて言うのが正解なのだろうか。
事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったもので、まさに奇妙奇天烈、どこに下ろしても恥ずかしくない程誰にも信じて貰えない与太話だった。
俺もそれなりに映画は嗜む方ではあるものの、こんな話は見たことがない。作り話にしたってあまりにも隙があり過ぎて、使いようがない。しかし、それが事実なんです、と突きつけられたのならば、もはや飲み込む他無いだろう。
「色々世話かけて悪かった。ごめん」
そんな口を突いて出たのは、相方への謝罪が最初で。
「……や、いいっすよ。犯人もハッキリしたし、なにより……その、悪気なかったみたいですし」
「俺もビックリだわ、アレ参考にしようぜ。今後ああいう演技できるようにしてこう」
「前向きすぎじゃない?」
「つうかお前二回もよっかかられてた?大丈夫?」
「怪我は無いんで、ほんと無事だからマジで!……平子さんも無事でなによりっすわ」
こうして奇妙な事件で始まった物語は、奇妙な結末を得た。
どうしてこうなったのかとか、分からないことだらけだが、そもそも害のある相手ではなかっただけで安心度は段違いだ。
ああ、黄色い車。黄色い車よ。愛らしく馬鹿らしく、なにより俺思いで居てくれる黄色い車よ。
俺もお前にたくさん助けて貰っているよ。
ありがとう。
ふう、と息を吐いて、車を見た。
そいつが俺にウインクをしたような気がした。……気がしただけだ。
安心したら眠くなってきた。ふわあ、と欠伸をする俺に、酒井はやっと笑顔を取り戻して「また寝ないでくださいよ?」なんて言い放つ。
「ところで、君は……誰やったっけ……ええっと……ああ、そうや!酒井くんや!」
───実は、今の話には、続きがあるけど。
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