白菊ほたる「傘を弔う」
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11: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:11:36.67 ID:3k7Y9koF0



わたしたちの共通点。
それは雨の日が好きということ。

「私、晴れ女なんですよ。だから雨の日って特別な感じがしてワクワクしちゃうんです」
「そうなんですか。わたしなんかむしろ雨女で、雨の方が自然なので……」
「え! いいなあ」
「でも晴れてくれた方がやっぱり嬉しいです。洗濯物とか、干せなくなるし」
「言ってくれればいつでも晴れにしてあげますよ」
「ふふっ、じゃあその時は茄子さんにお願いしようかな」
「逆に、雨が降ってほしい日はほたるちゃんにお願いしてもいいかしら?」
「ええっ、できるかなあ、わたしに」
「できますよ、きっと。だって、そのために私たちは出会ったんですから」

二人が出会うのは運命だったと、はっきり言葉にするようになったのはそういえばこの頃からだった。

最初は冗談だと思っていた。
というか、今でも何かの冗談だと思っている。
それはまさしく奇跡の力だったのだ。
あるいは、茄子さんがたくさん隠し持っている特技のうちの、取るに足らない一つだったのかもしれないけど。


そういうわけで、わたしは茄子さんのために雨を降らし、茄子さんはわたしのために雲を散らした。
何も難しいことなんてない。
ただ願えばよかった。
「そろそろ雨、降ってほしいですねえ」と茄子さんが言う。
わたしは「そうですね」と返事をしながら、その表情を覗き込む。
目が合って、茄子さんがにこりと笑うと、わたしはどこかくすぐったくなって、そして願う。
あしたは雨が降りますように。
すると翌朝にはもう、あかるい灰色の雨雲が空を覆っている。
天気予報なんておかまいなしに、やがて遠慮がちな小雨が風のない空から降りてくる。

そんな日の朝はわたしもつい早起きして、そわそわしながらテレビのニュースをチェックする。
耳を澄ませるとアパートの階段をのぼってくる足音、そしてドアをノックする軽やかな音。
はい、と返事をする頃にはもう、わたしは出かける準備ができている。
玄関の扉を開けるとそこには傘を手にした茄子さんが、いつものように楽しげに微笑んで言う。

「天気もいいですし、散歩に行きませんか?」



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