10: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/02/24(月) 19:10:52.98 ID:3k7Y9koF0
それから、たとえばゲームがものすごく下手。
テレビゲームもそうだし、将棋とか、オセロとか、いわゆる勝負事にめっぽう弱い。
わたしもどちらかと言えば下手な方だったけど茄子さんほどではない。
二人でマリオカートをすると大抵わたしがビリから3、4番目くらい。
茄子さんは10回連続で最下位なんてこともザラだった。
だけど茄子さんはどれだけビリになっても不機嫌になったりしない。
真剣にコントローラーを握って、それでもコースアウトすると「ああー」なんて言って笑う。
結局、先に飽きるのはいつもわたしの方なのだった。
そう、茄子さんはべつに勝負事が嫌いなわけじゃなかった。
むしろ彼女は無類の勝負好きなのだった。
たちの悪いことに。
ぷよぷよで遊ぶ時は大連鎖を組もうとして毎回失敗するし(たまに成功するけど)、将棋なんて場合によっては王将がひとりで最前線に繰り出されたりする。
ジェンガをする時は毎回ギリギリの崩れそうなところから攻めるから長続きしたことがない。
一人でプレイするゲームでも(たとえばRPGとか)なぜか回復アイテムを使わなかったり極力レベル上げせずにボスに挑んだりするせいでまともにクリアできたゲームはわたしの知る限りポケモンだけだった。
ちなみに茄子さんのお気に入りはラッキーというポケモンで、理由はゲームセンターのUFOキャッチャーで初めて取ったぬいぐるみだから。
「それはずいぶん前に失くしちゃったんですけどね」
けれどわたしは知っている。
その巨大なぬいぐるみは茄子さんの部屋の見えない中心に迷い込んでしまったのだ。
そうしてそれはきっとこの小さな宇宙のすべての引力を司っているに違いなかった。
……わたしが立てた仮説のひとつ。
あ、それと思い出した。
茄子さんが唯一得意だったゲーム。
彼女は桃鉄とか人生ゲームといったすごろくで遊ぶタイプのゲームでは非常識なくらい強かった。
記憶にあるかぎりだと、CPU相手でもたぶん一度も負けたことがない思う。
けれど茄子さんはそういうのはあまり好みじゃないらしくて、以前、商店街の景品で当たった人生ゲームは2、3回遊んだだけで部屋の奥深くに仕舞われてしまった。
それもたぶん、ラッキーのぬいぐるみの餌になって。
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