8: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 00:46:25.47 ID:CDwt0mRk0
ぼくのアイドル論とは全く無関係に、ぼくはそもそも面食いで、可愛いアイドルが好きだった。当然カッコいいアイドルも。そういう意味では、Pサマの存在は、なんていうか、こう……非常にモチベに繋がっている。そして毒でもある。心臓に負担が、が、が。
「千川ァ。俺の代わりに、こいつの教育すっか?」
9: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 00:48:21.68 ID:CDwt0mRk0
「た、食べる!」
「そうか。なら、俺も休憩にすっかな」
10: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 00:49:54.93 ID:CDwt0mRk0
* * *
「……」
11: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 00:52:18.84 ID:CDwt0mRk0
現在時刻は夜の八時半を回っていた。事務所に始発で来たから、かれこれ十四時間、アイドル活動をやっていたことになる。
今日は朝からテレビの収録があったのだ。
12: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 00:54:45.28 ID:CDwt0mRk0
だって仕方がない。仕方がないじゃん! 本当のことなんだもん!
五人でグループを組んでた時のほうが活き活きしてた。いまもパフォーマンスは凄いしファンサービスだってめっちゃだけど、だけど、だけど、……ステージで踊る彼女たちの汗と笑顔が、なぜだか尊く見えない。心でも魂でもなくて、技術でアイドルをやっている、そう思えちゃったのだ。
それが残念でしょうがない。泣きたくなるくらい悔しい。
13: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 00:56:05.75 ID:CDwt0mRk0
Pサマは怒っていたけれど、どこか嬉しそうな、楽しそうな顔をしていた。だからぼくは、やってしまったという自己嫌悪よりも、よっぽど自慢気が勝っているのだ。
初テレビ出演のお祝いに餃子も買ってもらったし!
薄汚れたコートを着たまま、Pサマは餃子を電子レンジに突っ込んだ。
14: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 00:57:04.84 ID:CDwt0mRk0
電子レンジが「チン」と音を立てる。呆れ顔のPサマ。扉を開け、餃子を取り出し、パックの蓋をとる。
安っぽいにおいがした。だからこその親しみやすさだとぼくは思う。
15: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 00:58:06.62 ID:CDwt0mRk0
* * *
蓋を開けてみれば、わかっていないのはPサマのほうだった。
16: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 00:58:49.94 ID:CDwt0mRk0
* * *
先日ぼくが大失敗してしまった初めてのテレビ撮影、ぼくは当然あんな映像使われないと思っていて――そしてそれはPサマも同じだった。だからぼくたちはその番組の放映日なんてすっかりと忘れてしまっていたのだ。
17: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2020/02/10(月) 01:00:19.46 ID:CDwt0mRk0
その声が、声たちが、いったい何についてぼくへと奔流を浴びせかけているのかわからなかった。やってしまったという後悔も、みんなが注目してくれているという昂揚もそこにはない。起き抜けの頭は火花が散るばかり。
そうして次第に明晰していく中で、ようやくぼくは気付いたのだった。
どうやらあの日の主張はボツにはならなかったらしい。
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