九頭竜八一「何がわかった?」夜叉神天衣「竜王になるための条件よ」
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9:名無しNIPPER[sage saga]
2020/02/05(水) 01:23:54.19 ID:30BMMpCHO
(まだ時間はある。じっくり読みを入れよう)

盤面を睨みつけて、八一は深く読む。
しかし、それは最善手とは程遠い一手だった。
八一が手抜いた隙を突いた方が有利なのに。

(ん? もしかして、この手は……)

たっぷり1時間ほど考えて、気づいた。
これは恐らく、当初の竜王の攻め筋だと。
八一は慌てて、記録係に申し入れた。

「き、棋譜を!」

これまでの棋譜を見せて貰う。
竜王はそのタイミングで手洗いに立った。
棋譜を確認して、やはりそうだと確信した。
そして竜王の残り時間を見て、戦慄した。

(きっかり1時間……俺と同じ時間を使ってる)

竜王は衰えてなどいなかった。
時間をかけて、八一と同じ結論に至っていた。
あの局面での最善手を導き出したのだ。

八一は自分が恥ずかしかった。
たしかに今、勢いや流れは自分にある。
竜王は必死にそんな挑戦者と戦っていた。
それなのに、八一は手抜いて選択肢を与えた。
怒るのは無理もないだろう。当たり前だ。
これまで費やした時間が無に帰したのだ。

「ッ……!」

ふらりと、竜王が手洗いから戻ってきた。

八一は今すぐ土下座したかった。
謝って、許して欲しかった。
竜王に殴られて、泣きたかった。
しかし、竜王は悠然と胡座をかき。

「……ぐぅ」

用を足してスッキリしたらしく頬杖をついて、いびきをかいていた。八一はちょっと泣いた。


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