白雪千夜「私の魔法使い」
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75: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:53:20.19 ID:ldlfMP+C0
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 頬を撫でていく風がすっかりと涼しいではなく寒いといえる時期になり、日が沈むのも早くなってきた。事務所の部屋の窓を閉め、ソファでくつろいでいたちとせと主人の世話をする千夜に改めて向き直る。

「どうかな、今年を締めくくる最後の舞台。スケジュールは調整してあるけど……」

 ちひろとも話していた、年末にあるイベントの件について2人に打診していた。

 他の事務所も交えたアイドルたちのLIVEパフォーマンスを競う大会、その新人戦にちとせと千夜を『Velvet Rose』として送り込みたい。個人での仕事も入ってきている中、そのためにレッスンを組まなくてはならなくなる。

 元々決まっていたようなものだが、ここにきてちとせの体力を憂慮して踏み止まっているのだ。もちろんそれはちとせも千夜も察していた。

「千夜ちゃんと2人でステージに立つ、今年最後のチャンスなんだよね?」

「そうなるな。事務所からも2人は期待されてる」

「なら、私たちに聞く必要はないんじゃない?」

「お嬢さま……よろしいのですか?」

「うん。出たいよ、千夜ちゃんと一緒ならなおさら」

 その一言で出場は決定事項となった。千夜もちとせを気遣ってはいるが、本心としてはちとせと同じ気持ちなはずだ。

「本当は本来の役割配分でパフォーマンスしてもらいたかったけど、負担を減らすためにデビューの時と同じでいこうと思う。いいね?」

「私は構いません。お嬢さまも、どうか」

 優雅な微笑みは鳴りを潜め、考える素振りを見せるちとせ。自身の身体のことは自身が一番理解しているだろう、その上でちとせは一歩立ち止まる。やり切れない思いが伝わってくる。

「……足を引っ張るのは私の望むところでもないしね。そうしよっか」

「足を引っ張るだなんて、私はそんな……」

「いいの。ワガママ言ってみたところで、カラダは誤魔化しきれないもん。だったら私に出来ることを精一杯やらなきゃ」

 表面上はいつものちとせになっていたが、内心悔しさを滲ませていることは千夜でなくともわかってしまう。わかってしまったから、プロデューサーは敢えて見ない振りをする。

「よし、じゃあ年末はその方向で。頼んだぞ2人とも、ユニットとしての仕事も入れて、しっかり宣伝しないとな」

「……」

 千夜がこちらを見て何かを言い掛けてやめたのも見逃さなかったが、それを今ここで触れるのはやめておいた。





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