白雪千夜「私の魔法使い」
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67: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:42:06.52 ID:ldlfMP+C0
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 学校の用事でちとせが遅れるとの連絡が入り、千夜だけでレッスンをこなしていた。映画の撮影に向けてビジュアルレッスン重視のカリキュラムを行わせている最中だ。

 ちとせは体力こそついてきてはいるが体調によるところも大きく、ダンスレッスンの不安定さは諦めざるを得ない。それ以上にボーカルレッスンとビジュアルレッスンはトレーナーにも評判なほど上達が早いため、得意不得意がはっきりしてきた。

 一方千夜はというと、主人に振り回されて仕方なく事務的にレッスンをこなしていた頃とは雲泥の差で、優秀な子とちとせが語るのも頷けるポテンシャルの高さを発揮している。

 今は出来ることが増えていくことに喜びを見出したらしく、以前と比較してさらに吸収力が高い。

 そんな千夜の様子を見にレッスンルームへ来てみると、休憩時間だったのかトレーナーの影は無く中にいたのは千夜一人だった。

「お疲れ様です♪」

 ばたん。

 半分開けかけたレッスンルームの扉を閉め、はてあんな見たこともない満面の笑みをむけてくれた少女は誰だったかと思いにふける。このレッスンルームを使用しているのは白雪千夜という名のアイドルのはずだが。

 悩んでいると中にいた人物のほうから扉を開かれ、そこにいたのは紛れもない仏頂面の少女だった。

「おい、何か言え」

「さっき千夜の他に誰かいなかった?」

「ばーか」

 奥へと戻っていく千夜に付き従う形でプロデューサーも中に入ると、肩をすくめながら千夜が釈明する。

「ファンを喜ばせる演技を教わったので実践してみれば、これがお前好みの挨拶でしたか。以後、しないように気をつけます。絶対にしませんが」

 ここまで明確な拒絶のオーラを出されては、もう一回と言いかけた口をつぐむしかなくなった。

「……まあ、ファンにはそうしてくれるならいいよ。一応俺もファン1号ではあるんだけど」

「私の最初のファン? とんだ物好きがいたものです」

「そういうこと大っぴらに言っちゃだめだからな!? いや、むしろ千夜のファンにとってはご褒美かも?」

「私は何だと思われてるんだ……」

 呆れっぱなしの千夜だが、今はまだちとせとの関係性に惹かれたファンのほうが断然多い。

 もっと多くの人から千夜個人に目を向けてもらうためにも、ちとせとばかり仕事を組ませるわけにはいかなかった。

「千夜はどういうアイドルを目指したい?」

「唐突ですね」

「そんなことないよ。自分がどう見られているか、気になってきてるんだろうし」

「……どういう、と言われても。お前が私の好きなようにやらせているのでしょう?」



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