白雪千夜「私の魔法使い」
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61:16/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:35:07.55 ID:ldlfMP+C0
「……1000円になります。他に何か欲しいものは」

 声量を抑えながら、しかし押し売りは再開される。

「増えた!? でも500円でそう呼んでくれるな、ら次から払ってみようかなあ」

「そんなサービスは取り扱っておりません。早くしてください」

 あまり持ち場を離れられなそうな割に、こうして抜け出せているのもまた協力者のおかげなのだろうか。
 物販ブースに目をやると、ちょうどアナスタシアと目が合い眩しい笑顔が返ってくる。

「……アーニャと仲良くなったのか?」

「そういうわけでは……あんなに綺麗な人までかどわかしていたとは、大したものですね」

「スカウトな!? まあ、運が良かっただけだよ」

「いたく情熱的な夜を共にしたとか」

「仕事も兼ねての天体観測ね!? え、アーニャが吹き込んだの? 千夜が悪意的に解釈したの?」

 大きな声を出さないよう自制しながらも際どい発言を連発し、なかなか腹の虫が収まらない様子の千夜である。プロデューサー呼びがそんなに屈辱だったのか。

 こうしていても埒が明かなそうなので、望み通り何か買ってこの場を離れることにする。千夜の様子も見れたことだし、長居は無用だ。

「えっと、トマトドリンク貰っていい? それ飲みながら回ってくるから」

 首肯し、千夜は物販ブースからトマトドリンクを取って戻ってくる。

「どうぞ。お代はツケで構いませんので」

「ツケって、一応関係者とはいえいい……のか? まあ問題あったら連絡してくれ、行ってくるよ」

「私たちのステージも観ていくように。わかってますね」

「言われなくても。それじゃ」

 今度こそ会場を回るため人混みの中に進んで入っていく。
 逆らえない流れの中、一度だけ振り返ってみると、千夜が控えめに手を振ってくれていた――ような気がした。






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