白雪千夜「私の魔法使い」
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6:1/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 19:32:12.48 ID:ldlfMP+C0

「ちひろさんこそ。まあ中に入りましょう」

 見慣れた朗らかな笑顔も引き連れ、揃って帰還する。初の顔合わせとなる3人の紹介はそれからだ。

「あー、こちらが千川ちひろさん。俺だけじゃないけど、いろいろとアシスタントをして下さっている方だ」

「よろしくお願いします♪ 黒崎ちとせさんと、白雪千夜さんですよね」

 初顔合わせのはずが名前と顔も一致しており、いったいいつ資料に目を通したのかわからない仕事の早さである。

「……白雪です。よろしくお願い致します」

 気のせいかちひろさんには丁寧に応対する千夜と、その隣で何がおかしかったのかちとせは軽く笑いを堪えていた。

「ちひろさん、か。ふふっ、ちーちゃんだね」

「? ああ、名前ですか。昔はそう呼ばれたこともありましたねぇ。お2人も?」

「私はそうでもないけど、千夜ちゃんはたまに私が。ね、ちーちゃん♪」

「紛らわしいのでいつも通りお呼びください。千川さんも、困るでしょうし」

「私のことはちひろでいいですよ。何ならちーちゃんでも♪」

「あはっ、よろしくねちひろさん。それにしても、こんな可愛い人をはべらしてるなんて魔法使いさんも隅に置けないなぁ♪」

 すっかり意気投合する3人のちーちゃんの輪に入る隙はとうにない。
 アイドルを迎える上で彼女らと歳も近く、同性であるちひろの存在には助けられている。今回ばかりは深く実感した。

「今日はまだお客さんですし、何か飲み物を淹れてきますね。座って待っててくださいな」

 もちろんプロデューサーさんも、と付け加えて簡易的な作りの給湯室へと消えていくまでちひろを目で追い、それからちとせと千夜が使用しなかったもう片方のソファへと腰を落とす。

 興味が尽きないのか、ちとせだけはちひろがいるであろう給湯室のほうへと目をやったままだ。

「アシスタントって言ってたけど、まさか魔法使いさんの小間使い、みたいなものじゃないよね? どういうお仕事をされてるの?」

「アシスタントはアシスタントだよ。……うん、アシスタントだな」

「答えになってないけれど……私にとっての千夜ちゃん?」

「ちとせにとっての千夜がどういう存在かはよく知らないが、多分2人の考えてるようなものじゃない。だからそんな嫌そうな顔するな、千夜。ここは仕事場だから!」

 実際に初対面の頃からアシスタントとしか聞かされておらず、普段の仕事ぶりを見ていても事務員とはまた似て非なるもののようで、どう説明したものか難しくはあった。
 あらぬ疑いが掛かる前に、間違っても爛れた関係でないことは宣誓しておく。


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