白雪千夜「私の魔法使い」
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5:1/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 19:30:27.52 ID:ldlfMP+C0


「――で、この辺は主にヴォーカルレッスンで使われてる。ここなら今は、うん。使われてないみたいだし、入ってみる?」

「ねぇ魔法使いさん、会いたくない人でもいるの?」

 千夜の目もあり医務室を始めとして淡々と案内をこなしていると、何の布石もなくちとせが意味ありげに呟く。
 洞察力の賜物なのかそれとも勘か、どちらにせよ彼女に嘘はつけないことは身に染みている。

「……どうしてそう思うんだ?」

「ふふ、なんでかなぁ。余計なものまで見えちゃうことがあるんだよね」

「そう? 会いたくない人は、いないよ」

「そっか。ごめんね、変なこと訊いちゃって」

 特に深入りすることもなくちとせは素直に引き下がった。今度こそ嘘はついていないが、何かを感じ取っていたらしい。

「もとより落ち着きがあるようには見えませんでしたが」

「千夜、フォローになってないぞ」

「したつもりもありませんので」

 すげなくそっぽを向く千夜。それともからかわれていたのだろうか。

「こほん。ちとせは、疲れてない? 下にはテラスがあるから案内がてら休憩も出来るけど」

「まだ、いいかな。千夜ちゃんは?」

「私は別に。大体は把握しましたので、今日の目的を考えればそろそろ帰ってもよいのではないでしょうか」

「あん、もうお腹いっぱいになっちゃった?」

「これ以上の案内に必要性を感じませんから。それにお嬢さま、あの何もない部屋を改装するおつもりなのでしょう?」

「本当にやるんだ……いや、いいんだけどさ」

 どうにも徹底的にちとせ好みへ変えられてしまいそうな予感が働き、そこで働くには場違いな空間へ変貌した職場をつい想像してしまう。
 俗世のお嬢さまは容赦がない、そんな偏見がプロデューサーの中にはとっくに芽生えている。

「あは、ならちょっと下見に戻ろっかな。それにまだ紹介してもらってない人もいるしね」

「……今ならいるかも。じゃあ一旦戻ろう」

 デスクが2人分とあれば、部屋に通う者が少なくとも2人いることは明白だろう。
 あの部屋に活気があった頃、ほとんど常駐してアシスタントをしてくれていた女性がいる。彼女を紹介して今日はお開きだろうか、などと考えていたところで、まさに部屋へ入ろうとしている彼女と鉢合わせになった。

「あら、プロデューサーさんお戻りですか?」


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