白雪千夜「私の魔法使い」
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29: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:00:01.07 ID:ldlfMP+C0
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 2人がユニットデビューを果たす日も差し迫り、合同レッスンを中心にスケジューリングしてある。最後にそれぞれ受けさせていたオーディションの合否はまだ発表されておらず、それを確認出来たら残った空白を確定する次第だ。

 待つのも兼ねてレッスンルームへ見学しにきたプロデューサーは、ダンスレッスン中の2人の様子を眺めていた。振り付けを覚えている最中であり、進捗状況を窺うには都合が良い。

 体力の問題から、ここまで基礎トレーニングをひたすら積んできたちとせの動きは、余力が残されている内は相方に引けを取らない華麗さを見せている。
 本番はここに歌も加わるので、負担を考慮するなら今のうちに振り付けを変更するなり判断を下さねばならない。

 一方千夜はというと、体力的には問題がなく相変わらずの飲み込みの早さで振り付けをものにしていた。余裕があると見るなら、ちとせの負担を肩代わりさせるのも手か。

 トレーナーは2人をどう見ているか、率直な感想を聞きたい。そんな視線を送ってみると、どうやら意図を汲んでくれたようでレッスンは小休憩を挟む運びとなった。

「……はぁ、疲れた。血が足りないかも……」

「お嬢さま、飲み物はこちらに。さあどうぞ」

 ちとせを気遣う余力も健在な千夜を横目に、休みが間延びしないよう急いでトレーナーと意見を交換する。

 初めを思えばちとせはよく動けるようになってはいるが、やはり体力をどこかで温存させないと一曲通すには不安が拭えないそうだ。手を加えるなら早い方がいい、概ね一致した意見である。

「デビューの晴れ舞台で倒れさせるわけにはいかないからなあ……」

 悪い意味で注目を集めてしまっては意味がない。むしろマイナスだ。
 トレーナーの了承を得て、休憩している2人に決定事項を伝えることにした。

「少しいいかな、そのままでいいから話があるんだ」

 千夜の肩を借り、身体を預けて楽な姿勢で座っているちとせは少々気だるげだ。顔色は悪くない。

「なぁに? 心配しに来てくれたの?」

「……」

 ちとせのいない間に千夜と話しあってからというもの、何とも言えない気まずさが残り千夜はこちらを一瞥して顔を背けてしまった。こんな調子がずっと続いている。
 これもどうにかしないといけないが、まずは目下の問題を片付けなければ。

「役割配分を変えようと思う。だから君たちの意見も聞きたい」



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