28:7/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 19:59:12.72 ID:ldlfMP+C0
「だけどお前は、そうじゃない。たとえ何かを見失って逃げ出したとしても、ずっと待ってくれている人がいる」
「だから……ずるい?」
「……私にもよくわかりません。ただ、お前の夢に見せられた人たちにとっても、今のままでいいはずはないでしょう」
千夜が失くしたものは、どんなに欲しても帰ってはこない。だからこそ、千夜にはプロデューサーが大切にしているものを放置して、その上でちとせと千夜だけをプロデュースしている現状が疑問となっている。
このままでいいはずがない、ちひろにも再三言われてきていることだ。千夜に指摘されるとは思いもよらなかったが、その千夜もまたそんなプロデューサーを責めてはいなかった。
「聞かないのか? 俺がどうしてみんなから逃げ出したのか。どうして君たちを、プロデュースしているのか」
「興味ありません。話したければ勝手にしろ。話したくないなら……聞かないでおきます」
ぷいとこちらが座る反対側へそっぽを向かれた。話は終わったらしい。
いっそ千夜に叱ってもらえたら、少しは心が軽くなったりしたのだろうか。
千夜がそうしないのはきっと、ちひろを含めた誰もがプロデューサーを咎めていないことに気付いているか、あるいは知っている。
もしくは……深く関わり合いになりたくないだけか。いずれにせよ、千夜から初めて歩み寄ってくれたことには変わらない。
こうして自分だけがいつまでも自分を責め続けている。どうにも優しい少女とは縁があるようだ。
「話したくない、わけじゃないんだ。そんなに長くなる話でもないし」
だが千夜とちとせには、自分の過去のしがらみに囚われて欲しくなかった。
こんな自分がちとせに惹かれ、千夜に惹かれ、彼女たちに負けないくらい2人を輝かせることが出来た暁には。
「いつか、みんなを紹介するよ。だから……頑張らせてくれ」
「それはお嬢さまに伝えなさい。せいぜい愛想を尽かされないよう、お嬢さまを退屈させないことです。私も……お嬢さまのためになるなら、そう望みます」
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