6: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/01/24(金) 21:14:03.48 ID:W4W9+UtG0
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学園までの一本道
クマのトートバッグは膨れていた。食後には甘い物も付いてくるみたい。
「いらっしゃいませ」
突然呼びかけられて、声の方向に目を向けてしまった。金髪の白人が立っていた、名札は『Clarice』……クラリス、かしら。
「かな子、このお店は?」キッチンカーが庭に止まっていて、そこに看板には『Yuri−s』と書かれていた。ユリーズ、でいいのよね。
「ゴールデンウィーク初日にオープンしたみたいです。喫茶店で、ランチも食べられるそうですよ」
「喫茶店?」学生向けのお店は出来ては潰れちゃうし、喫茶店を開くなら住民向けの方がいいのに。
「紅茶、コーヒー等ご用意しております。いかがでしょうか」
「今日はいいわ。行きましょう、かな子」歩き始めようとすると、建物から量が多い髪を後ろでまとめた女性が出て来た。
「クラリスー、交替だじぇ。おっと、お客さん?学園の生徒さん?」
名札は大西由里子。名前からして店長ね、意外と目立ちたがり屋の。
「そうだけれど」若い女性が生徒向けに始めたお店だとすると、見込みが甘いように思うけれど。
「うーん、お夕飯の買い物はしてるみたいだし。明日のお昼を食べに来ない?そこしかチャンスはないと思うじぇ」
この店長さん、ちゃんと調べてるみたい。
「来週には閉店するから、ラストチャンスだじぇ」
「私は学生寮の食堂に行ってみたいですわ。ビュッフェ形式で毎日種類も豊富だそうで」
印象よりもずっと頭のまわりそうな店長さんと、見かけよりも食欲に支配されている異邦人。
「味もいいわよ。閉店するのは賢明だと思うわ、生徒はあまり外に出ないし」
「リサーチ通りだじぇ。故に、明日がラストチャンスで稼ぎ時!」
「食堂も中学生向けの説明会の時しか開放されないと、伺っています……」
本当に良く調べてるわね、侮れないわ……いいえ、何も警戒する必要ないわね。
「奏さん、あの」
「かな子、何かしら?」反射的に聞いたけれど、何を聞きたいかは表情でわかった。
「明日のランチをここでしませんか?」
「まぁ、いいわよ。付き合うわ」夕食の材料しか買ってなかったわね。かな子は最初からそのつもりだった、ということ。意地悪ではないわね、かな子のことだし。
「お待ちしてるじぇ!」
「お待ちしております」
店員の2人は目を細めて、金髪の異邦人は最初から同じ表情だったけど、私達を見送ってくれた。
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