7: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/01/24(金) 21:14:58.01 ID:W4W9+UtG0
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木犀浪学園・校庭
「今日は静かね」
「部活もお休みですから」
誰もいない校庭をかな子と2人で横切る。普段は通らない中央の天然芝を踏んで、ラグビーのゴールポストをくぐり抜けてみる。競技人口の少ないスポーツを、この学園は支えている。古い価値観と先進的な価値観はぐるぐる回るもの。
寮は敷地の奥。3階建ての建物が2棟あって、私達の部屋は40号室より後ろなので2号棟。どちらの寮も渡り廊下で東西に延びる大きな校舎の西端に繋がっていた。その西端の1階に、クラリスという店員が気にしていた食堂がある。今日は明かりもついていなかった。
木犀浪学園の敷地には1年中白い花がどこかで咲いている。今も咲いているのが見える。白き花は浪のごとく、という一文が入った詩だか古語から校名は由来しているとか。校名についている木犀の花が満開で波のように揺れるのも、時期になれば見えるそうよ。
食堂の脇を抜けて、寮の玄関に着いた。木製の下駄箱は古いけど丁寧に手入れがされていて、使い心地は悪くない。休み中にお手紙を入れる人はいなかった。かな子がお近づきの標にくれたピンクのスリッパを履いた。実は気に入ってるの、これ。
何度かリフォームされ、掃除が行き届いた寮は綺麗さと懐かしさが同居している。部屋は343号室。階段を登り切ったところで、かな子が声をかけて来た。
「買って来たもの、冷蔵庫に入れてきますね」
「手伝うわ」寮の各階に共同キッチンがある。大きな冷蔵庫も一緒に。
「いいですよ、戻っていてください♪」
「それじゃあ、お言葉に甘えるわ」そう言えば、まだ部屋に戻っていないことを思い出したわ。かな子より先に座らせてもらうとしましょう。
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