麻子「……華、さん」 華「はい?
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56:名無しNIPPER
2020/01/13(月) 00:13:55.53 ID:j/ROv3cf0
……三十分前 通学路……

麻子「――昨日はすまなかったな」

華「え?」

麻子「話の途中で感情が抑えられなくなって、結局はっきりした答えを出せずに寝てしまった」

華「あぁ……そういえばそうでしたね」

麻子「……私は理屈っぽくて、いちいち面倒な人間だと言っただろう」

華「えぇ」

麻子「感情ではな。このまま華さんの恋人になりたいと思う。だが頭のどこかでは、やはり別の付き合い方もあると考えている」

華「別の付き合い方……ですか?」

麻子「仮に私とは特別な関係にならず、華さんも私もそれぞれ別の道を歩んでいったとしよう。もしかしたら今のこの気持ちは一過性のもので、後になって青春のひとかけらだと思える過去のものになるかもしれない」

華「……未来のことは、わかりませんからね。時間と共に人の気持ちも移ろいますし」

麻子「……あるいは他の人たちと同じように、私も華さんも別の誰か……男性を好きになって、他の人と同じような家庭を持つのかもしれない。多分、その方が色んなことを気にせず生きられると思う」

華「……」

麻子「でも……そうして今の気持ちを忘れようとするのが正しいかどうかも、私にはわからない。だから、猶予期間を設けてみないか」

華「猶予期間?」

麻子「私たちが大洗を卒業して学園艦を降りることになって……おそらくは別々の大学へ行くことになって。その時になってもお互いに今の気持ちが残っていたら……私の恋人になってほしい」

華「……お互いに少し気持ちを落ち着けよう、というわけですね」

麻子「あぁ。なにせ私たちは二人とも恋愛初心者だ。しかも女同士……自分の気持ちが純粋に相手を想ってのものか、単に一時的な欲求に流されているだけなのかの判断もできない」

華「わたくし、いまは純粋に心から麻子さんが好きだと自信を持って言えますけれど……」

麻子「だ……だから、それを客観的にかんがみるためにも考える時間が欲しいんだ。中途半端な気持ちで返事をして、あとから華さんを裏切るようなことはしたくない」

華「麻子さん……」

麻子「……卑怯な逃げ方だと思うかもしれない。端から見たらいわゆる『キープ』状態だからな。でも、これだけは覚えておいてほしい」

華「?」

麻子「今言ってるのはあくまで付き合う付き合わないという、対外的な束縛関係をいつ始めるか、というだけの話だ。つまり……その……」

華「大丈夫ですよ。はっきりおっしゃって?」

麻子「……華さんがやりたいなら、別に何をしたってかまわないしどこへだって一緒に行ってやる。もし……いま『恋人らしいことをしたい』だけなら……断る理由はないってことだ」

…………


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