8:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:44:42.74 ID:uct5lrwh0
ガヤガヤ…
人形「あら? 今日はお客さんは来ないはずだったんじゃ」
育「まつりさんたちが舞台挨拶から帰ってきたんだ。ねぇ、隠れて!」
9:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:45:10.69 ID:uct5lrwh0
まつり「ほ……ではファンのみんなにこのきれいな劇場で新春ライブを楽しんでもらうためにも、レッスンをぱわほー!に頑張るのですよ」
昴「そうだな。――って、今日はこの後レッスンの予定だったか?」
響「予定はないけど、自分今日はまだまだ動けるぞ。少しなら自主練しても大丈夫だよね?」
10:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:45:38.46 ID:uct5lrwh0
育「わたしに会いに来たってことにも、何か理由があるんだよね。ねぇ、もしかしてあなたはわたしが捨てたおもちゃのお化けなの?」
人形「違うわ。わたしを捨てたのはあなたじゃない」
育「それじゃあ、あなたはどうしてわたしを知ってるの?」
11:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:46:06.47 ID:uct5lrwh0
わたしは長い間ある家の物置部屋にいた。
元々わたしの持ち主はその家の娘だったのだが、大人になって他の家に嫁いでしまい、以来わたしは箱に入れられ物置にしまわれていたのだ。
あるときわたしはそこから運び出され、何十年ぶりに箱から取り出された。
12:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:46:41.48 ID:uct5lrwh0
彼女は長い時間を部屋で一人で過ごしながら、頻繁にわたしを呼び、微笑んだ。
彼女はわたしに何かを話しかけると、その度にわたしを片手で持って"わたし"に扮して喋り、まるでわたしと会話しているかのように振る舞った。
彼女が演じる"わたし"は、彼女の何をも否定しなかった。
13:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:47:17.20 ID:uct5lrwh0
それから半年ほどで、彼女はあっさりと母親の元へ戻ることになった。わたしも彼女と共にそこに連れて行かれた。
以前よりは"わたし"と遊ぶ機会の減った彼女だったが、それでも日に何度かは必ず"わたし"に話しかけ、"わたし"もそれに応えていた。
数年後、中学生になった彼女は"わたし"に全く話しかけなくなった。
14:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:47:43.86 ID:uct5lrwh0
気がつけばわたしは捨てられ、ガラクタの山の中にいた。
かつて人の営みの中で何かの役目を与えられていたであろうモノたちが、見る影もなく雑多に折り重なって造られた山だ。
わたしは認識した。ここが終わりの地。わたしにとっての墓場なのだと。
15:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:48:14.82 ID:uct5lrwh0
しかしわたしは消えなかった。魂を宿し付喪神となり、この世に留まり続けた。
わたしをこの世に留めたものは何なのか。
怨みなど抱いた憶えはない。そもそも怨めるほど彼女に肩入れした憶えなどないのだ。なにせ彼女はわたしの当初の持ち主ではなかったのだから。
16:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:49:04.83 ID:uct5lrwh0
人形「――不要になったおもちゃは捨てられる運命。だけどあなたは人間。わたしのようになってはいけない」
育「うん……あなたがどうしてお化けになったのはわかったけど、どうしてわたしがあなたに似てるって思うの?」
人形「あなた……本当に心当たりがないの?」
17:名無しNIPPER[saga]
2020/01/11(土) 21:49:56.99 ID:uct5lrwh0
まつり「はいほー! 育ちゃん、お菓子作りのお手伝いをするんじゃなかったのです? 律子ちゃんたちが呼んでいたのですよ」
育「あっ、ごめんまつりさん。今行くね」
人形「長話に付き合わせてしまってごめんなさい。今日はもう十分よ。また明日来るわ」
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