芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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66: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:40:05.37 ID:hoMUvMIQo

 ――その二つに大した違いなんてない。

 古びた記憶のどこかにいるプロデューサーが答えた。

以下略 AAS



67: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:40:57.09 ID:hoMUvMIQo

 私にはその言葉の意味が分からなかった。分からなくて、それでも尋ねた。

 どうしても知りたかったんだ。内側に抱えてしまった感情の正体を。

以下略 AAS



68: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:41:42.36 ID:hoMUvMIQo

 ――何者かになりたいと思ったことってある?




69: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:42:15.43 ID:hoMUvMIQo

 あれから色々と考えた。

 もっともらしい答えのようなものを手にしては、やっぱり違うだなんて言って手放して、そんなことを何度も繰り返した。
 その中には、もしかしたら正解があったのかもしれないし、あるいは全部間違っていたのかもしれない。
以下略 AAS



70: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:43:07.50 ID:hoMUvMIQo

「もっと早くに見つけられていたらな」

 目の前に高く聳え立った送電塔に向かって零す。
 過ぎたことを嘆いても仕方がない。小さく首を横に振って、私は手元の地図に目を落とした。
以下略 AAS



71: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:43:50.03 ID:hoMUvMIQo

 視界の開けた傾斜を上る。
 左後方から右へ向かって斜めに送電線が全部で八本架かっている。それ以外に空を遮るものは何もない。
 一面の灰に塗れた空は、あるいは悪趣味な色をした天井のようにもみえる。
 なのに、息が詰まるような閉塞感は不思議となくて、そのことがちょっとだけ癪だった。
以下略 AAS



72: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:44:19.11 ID:hoMUvMIQo

 第二区と称された空間に一歩足を踏み入れる。
 ここだけは丁寧に石畳が敷かれていて、私は濡れた足元に注意を払いながら歩いた。
 普段より足早になっていることにはちゃんと気がついていた。

以下略 AAS



73: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:44:57.85 ID:hoMUvMIQo

 見慣れない名字が楷書体で深々と刻まれている。
 こうして実際に目の当たりにしてみると、現実味なんて思っていた以上にどこにもない。
 やっぱり縁も所縁もない赤の他人を訪ねているような気分になってくる。

以下略 AAS



74: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:45:51.32 ID:hoMUvMIQo

  *

 ところであさひ、作詞に興味はない?
 サクシ? 二本の矢印を並べて、どっちが長いか短いか、ってやつっすか?
以下略 AAS



75: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:46:26.44 ID:hoMUvMIQo

 ああ、そういえばそれもサクシっすね!
 その二つが出てきてこれが出てこないのも、なんというかおかしな話だけれどね。
 たしかにそうっすね。
 単語の意味が音だけで一意に定まらないのは、日本語の難しいところだよね。その解決に文脈が一役買うわけだけれど、いまのはいきなりだったからな。こっちが悪かった。
以下略 AAS



76: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:46:57.23 ID:hoMUvMIQo

 実はこういう話がある。
 ……何すか、これ?
 以前に言っていた次の仕事の企画書を起こしたもの。
 あの話っすか。無事に通ったんすね。
以下略 AAS



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