芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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4: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 19:58:59.69 ID:hoMUvMIQo

「それが関係あるんすか?」

 どこかで交通規制でも起きているのか、いつもより混雑した四車線の左端を、車はゆっくりと進んでいく。
 ガードレールの向こうを歩く人達は、こっそりと示し合わせたように黒かビニールの傘ばかりを差している。
 そのことがなんだか面白くて、だけど、すぐ脇に立てかけられた私の傘も窓の外にあるそれらと違わないことに気がついて、それは何となく楽しくないなと思った。

「その『何者か』っていうのは――」

 緩慢に過ぎ去っていく風景を眺めながら私は言う。

「たとえば、あの女の子みたいな感じっすか?」

 窓の外、前方から歩道の上を、小学生くらいの女の子が、恐らくは父親と思われるスーツ姿の男性と一緒に歩いてくる。
 少女の隣で穏やかに笑う男性の手には大きめのレジ袋、その中にはいかにもホールケーキでも入っていそうな角張った箱がみえる。
 誕生日のお祝いか何かだろうか。
 あてもなく、そんなことを考える。
 
 水を編んだように青く透明な生地でできた傘を、少女は楽しそうにくるりと回す。
 たったの一瞬の光景は、だけど、とても鮮やかで、眩しくて、まるで映画のワンシーンみたいに私の目に焼き付いた。
 肝心のカメラがどこにも見当たらないことが不思議だった。




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