芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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35: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 20:20:07.58 ID:hoMUvMIQo

「だから言ったろ」

 プロデューサーさんは呆れた様子で、視線をわずかに上へ動かす。

「この様子じゃ、向こうに着いた頃には降り出すんじゃないかなあ」

 私も同じことを考えていた。
 まるでいまにも溶け落ちてしまいそうな色の空だ。

「おあつらえ向きっすね。笑えるくらいに」

 投げやりに放った私の言葉に彼は、何が、と言った。
 鈍色の雲を追いながら、私は続ける。

「こういう日には雨が降るって、それはもうお約束じゃないっすか」

 そう、お約束だ。
 影に青空、傘に曇天。生は純白、死は漆黒。出会いが朝なら、別れは夜。夢が夜明けなら、思い出は雨模様。
 心象風景、因果の逆転、舞台装置、お約束。




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