138: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 21:24:04.87 ID:hoMUvMIQo
見慣れた景色の中を列車は走っていく。
途轍もない速度で移動しているはずなのに、しかし遠くに張りついた町並みはほとんど静止しているようにみえるという現象が、不思議で不思議で仕方がなかった時期があったことをふと思い出す。
いまはそうじゃない。
いまの私はこの現象の理屈を分かっているし、完全ではないにせよ、聞き齧った物理の知識を使えばある程度なら説明できる。
私たち人間よりも雲のほうがずっと速く歩いていることだって知っている。
だけど、それはただ知っているだけで、つまり、この世界が宿していた素敵な魔法の一つを徒に紐解いただけだ。
――プロデューサーなら。
あの人なら、このいたって平凡な風景をどんな風にみるだろう? そんなことを車窓の向こうに考える。
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