122: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 21:13:58.31 ID:hoMUvMIQo
「じゃあ、これが悲しいってことにしておくっす」
そうして私は、この痛みに名前をつけた。
心の奥に深く刺さったままで抜けない楔を、私は悲しさと呼ぶことに決めた。
そのことに意味があるかどうかなんて分からない。だけど、不思議と悪い気分じゃなかった。
こんなにも強く意識に訴えかけてくる感情を、たとえ一時の錯覚だとしても、それでも愛していけそうだと思えた。
あさひは本当に強いな、と彼は独り言のように呟いた。
私は、そうっすかね、とだけ笑って、またもくるりと振り返った。
そうして私の視界は再びそれを捉える。
高台の隅でひっそりと佇んでいるそれは、ただの空っぽだ。
ここには何もない。あの人が眠っているわけでもない。私の言葉なんて今更どこにも届かない。
だけど。
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