121: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 21:13:27.58 ID:hoMUvMIQo
麓の町は青みがかった影にすっぽりと覆われている。
遠くの海も、送電塔も、きっと私自身さえも、ここにある全部がいまこの瞬間だけは等しく同じ色をしている。
それはとても穏やかな光景で、できることならずっと眺めていたいと思った。
「俺には分からない」
その声に、私は背後を振り返る。
目が合うと、彼は自然な流れで微かな笑みを口元に浮かべた。
彼もまた、私と同じ色をしていた。
「だから、あさひの好きなように決めたらいい」
どこかで聞いたことのあるようなその台詞に、私は思わず笑う。
その微笑みにいつかのプロデューサーが重なってみえた。
あの人が彼には心を許していた理由も、いまなら何となく分かりそうな気がした。
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