芹沢あさひ「この雨がいつか止んだなら」
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112: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2020/01/04(土) 21:08:39.25 ID:hoMUvMIQo

「よく言ってたよ。自分が隣にいるせいで、あさひの人格を傷つけたくないって」
「どういう意味っすか?」
「さあ。俺はあの人じゃないから分からないけれど、多分、そのままの意味なんじゃないかな。自分の色に染まっていくあさひの様子を、あの人はあまり良しとはしていないようだった」
「まあ、そうっすね。あのときの答え自体がそういう意思表示だったんだと、いまでは思うっす」

 ――何者にもならなくていい。

「あまりにも分かりやすい否定っすよね、本当に。わたしのことを全部見透かした上でそう言ってるんすから、なおさら酷いっす」

 私はそう続けた。
 プロデューサーさんが何かを言おうとしたようだったけれど、不意に辺りを吹き抜けた強風が、私たちから言葉を奪っていった。
 乱れる前髪に私は思わず顔を伏せて、そのまま風が止むのをじっと待った。
 雨に降られた町を擦りつける温く湿った風は、全身が酷く濡れているせいか、やけに肌寒く感じられた。




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