【モバマス】ダーツ好きな男とあるアイドルのお話
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4:名無しNIPPER[sage]
2020/01/02(木) 22:15:02.21 ID:ICzXr4+z0
周子が中学を卒業し、高校も卒業する頃。既に腕の差はほとんどなく、お互い切磋琢磨するような関係へと変化していた。

自分は大学を卒業し、そのまま知り合いのダーツバーへと就職もせずバイトとして手伝いながら毎週周子とダーツの腕を競っていた。

後からわかったことだが少女は実は左利きであり、左で投げるようにさせたところめきめきと上達し今ではたまに自分を負かせるまでになっていた。

そんなある日、いつものような軽装ではなくリュックサックに色々持った姿で店に来た周子は突然こう言ってきた。

「師匠、アタシと勝負して。アタシが勝ったらしばらく師匠の家に居候させて」

理由は聞かなかった。短くない付き合いでこの子が意味もなくそんなことを言いだす性格ではないことはわかっていた。

勝負は一進一退のまま、お互い残り1投で決まるところまで進む。

「なあ、どうして急に居候なんて言いだしたんだ?」

「……親にさ、このままだらだらと暮らすだけなら出ていけって言われちゃって追い出されたんだ」

「……そうか」

以前、尋ねたことがあった。将来何かやりたいことはあるのかと。

その時周子はどうせあたしの人生このまま家を継いで適当な職人さんと結婚して和菓子売って終わるんだなあって思えててさ、

特にやりたいこととかってないんだよねー。と少し悲しそう、そして寂しそうな顔で語っていたのを覚えている。

ああ、それならいっそのことこのままこいつを――

「……あたしの勝ちだね」

「ああ、そうだな。何もない家だが来ると言い。その代わり家事とかは手伝ってもらうぞ」

最後の1投、わざと外したのか、外れたのか。自分でもわからないまま周子を居候させることになった。


「師匠とこうやって本気で勝負するのは三回目だね」

「……そうだな」

ここで本気の自分を見せるのは初めてかもしれない。だからか左がとか、本気だとすげえとかそういう声が観衆から漏れ聞こえてくる。

奇しくも勝負は最初の時と同様お互い残り1投で決められる範囲まで進んでいた。


「アイドルにスカウトされた?」

ある日、バイトから帰ってくると家でそんな突拍子もないことを周子から聞かされた。

「うん……なんか、寂しそうに見えたとか、キミならきっとアイドルになれるとかそんな感じ」

「胡散臭い奴だなあ……名刺貰ったんだ?」

「そう、一応本物っぽい感じだよね。興味があったら今度オーディションがあるから来てくれって」

「ふーん、で、どうなんだ?」

見た感じまんざらでもなさそうに見えなくもないが、どうしたものかと迷っているように感じられる。

「悩んでるんだ、このまま師匠と一緒にダーツをしながら過ごすのも嫌いじゃない。けれどもこんなアタシを誘ってくれたのも興味がないと言えば嘘になるんだよね」

「……なら決めようか。ダーツで」

「ダーツで?」

「俺はせっかくお前が興味を示したアイドルってのをやらせたいと思っている」

「……うん」

「だから俺が勝ったらオーディション受けてこい。というかここを追い出す」

「えっ」

「そもそも年頃の女の子を居候させてること自体よくないことだしな。いい機会だ、ここでお前を追い出すことにする」

「ちょ、そうなったらどうすりゃいいのさ」

「実家に頭下げて帰ればいいだろ」

「無理だって!」

「なら負けなければいい。簡単だろ?」

「わかった、そうだよね。もう師匠に負けないってところを見せてあげるよ」


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