【モバマス】ダーツ好きな男とあるアイドルのお話
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3:名無しNIPPER[sage]
2020/01/02(木) 22:14:14.86 ID:ICzXr4+z0
数年前、まだ大学生で京都で一人暮らししていた頃。彼女とは出会った。

近所の中学校の制服姿で夜に神社の隅で一人立ち尽くしていた少女を当時の自分は見過ごせず、つい声を掛けてしまった。

「よう、こんな夜に一人でいたらあぶねえぞ。早く帰りな」

「……帰りたくない」

「親と喧嘩でもしたのか?どっちにしろこんな夜に女子中学生が一人でいると危ないだろうが」

図星だったのだろうか、無言で俯く少女。さすがに放っておくのも声を掛けた手前気が引ける。

「……なら仕方ない。これからちょっと遊びに行くけど一緒に来るか?」

思えば危ない誘いだろうに躊躇いもなくついてきた。後に理由を聞いたらあんな注意してくれる人が襲ってくるわけはないと思っただそうだ。


「何、ここ?」

連れてきたのは知り合いが経営しているダーツバー。とはいえ大して流行ってもいないので客などおらず独占状態である。

「ダーツバー。ダーツって知ってる?やったことあるか?」

ダーツを投げる仕草をしながら問う。少女は首を横に振り、やったことはないと呟く。

「ならちょうどいい、せっかくだから教えてやるさ」

暇そうにしている知人に飲み物と軽い食べ物を頼みながら少女を座らせ自前のダーツを用意する。

「ルールは簡単。ダーツをこうやって持って投げてあの的に当てるだけ」

右手で矢を構え、狙いを付けて投擲する。ただそれだけだ。

「な、簡単だろ。ルールは色々あるがとりあえず投げるだけでも楽しいもんだ。やってみるか?」

矢を少女に差し出すと、おずおずと少女が受け取りながら先ほどの自分の見よう見まねで投げる。

「……うまく飛んで行かない」

「意外と重いからな、金属の矢は。まあでも高さが足りないだけで真っ直ぐには投げられているから悪くない」

少女に手を添えてこういう風に構えて投げるんだと指導しながら二投、三投と練習して行く。

徐々にコツを掴んで行ったのか少女はだんだん的へと当てられるようになっていく。

「うん、悪くないな。どうだ、面白いだろ?」

「……楽しい。もっとやりたい」

「なら今度はちゃんと親御さんの許可を取ってからな?」

諭すように伝えながら知り合いに持ってきてもらったサンドイッチを差し出す。

モグモグと食べながら家の連絡先を教えてもらい、知り合いに頼んで迎えに来てもらうように連絡をつけさせる。

「毎週土日の昼間なら稽古してやるから今度はちゃんと来いよ」

こうして塩見周子との出会い、そして奇妙な付き合いは始まることとなった。



「……ルールは?」

「あの時と同じ501ゲーム、ダブルイン、ダブルアウトで」

お互いにダーツボードの前に立ち、自前のダーツを準備する。

ADやカメラマン、常連客が見守る中お互い無言で左手で矢を持ち一投目を投じる。

「ふーん、どうやら腕は鈍ってないようだね」

「そういうお前は上手になったな」

投じた矢はお互い20のダブルリング内へと刺さっていた。


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