【モバマス】ダーツ好きな男とあるアイドルのお話
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2:名無しNIPPER[sage]
2020/01/02(木) 22:13:17.60 ID:ICzXr4+z0
「店長、ここの店に今からTV番組の取材をしたいという依頼がありますがどうしますか?」

事務を担当してもらっている女性からそんなことを尋ねられる。

時間を確認し、特に問題もないことから了承の意を告げてもらいつつこんな場末のダーツバーに取材なんて物好きがいるもんだなと苦笑してしまう。

店ではまばらに入った客が思い思いにダーツを投げ遊んでいる。テーブルで軽食をつまみながら、軽いお酒を嗜みながら、そんな人の集う場所である。

趣味が高じて開いた店ではあるが元々金儲けが目的ではないのでただダーツを楽しんでもらえればと思っているのでこれ以上は望まない。

「あ、マスター。最近デビューしたアイドル知ってます?」

常連の一人でアイドル好きでもある男がいきなりアイドルの話題を振ってくる。

「アイドルなんて元々そんなに興味ないからなあ、なんで藪から棒に」

「それがね、この子なんだけど趣味がダーツってことで店長も好きになるかなって」

そう言って男が差し出してきた雑誌のとある1ページに目を落とす。そこに写っていたのは――

「塩見周子ちゃんって言うんだって、どう?」

ああ、知っている――

「なんでも実家から追い出されたところをスカウトされたのがきっかけでアイドルになったとか凄いよねえ」

そいつは和菓子屋で看板娘として手伝いながら夢も見つけられないまま暮らしていた。

「なんでも献血も趣味なんだって。見た目は今時って感じの子だけどいい子だよねえ」

そんな健気な理由ではなくお菓子が食べ放題だからちょうどいいんだって本人は言っていた。

「すいませーん、先ほど取材の依頼をした○○テレビの者なんですが」

常連さんの話を黙って聞いていたら入口の戸を開く音と同時にADっぽい青年が取材の準備をするために挨拶をしに来た。

「今日はよろしくお願いします。うちの出演者が番組でダーツしたくなったからって唐突に寄ろうなんて言いだしたもんで」

「いえいえ、こんな場末のダーツバーでよければ構いませんよ」

実際多少なりとも宣伝になれば通ってくれる人が増えるかもしれない。それならそれでラッキーだ。

「ありがとうございます。取材OKなんで現場入りお願いしまーす」

ADの指示でカメラマンが店の入り口で待機して入口から1人の女性が入ってくる。そいつは――

「……お久しぶり、師匠。今日はあの時の決着を付けに来たよ」

「え、塩見周子ちゃん!?本物の!?」

数か月前とは見違えるような瞳と表情、そして決意を見せている塩見周子だった。




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