53: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 10:06:22.58 ID:ck9R+qDf0
紗代子「えっと……自分の中では一番苦手でもあり、今よりもダンスを磨く為にレッスンを増やしたいんですけど、どうでしょうか……と」
プロデューサーからの指示伝達が届くより前に、紗代子は初めて自分からメールをしてみた。絵に描く特訓は、電車ではできないとわかると、何か代替の方途が必要ではないかと心配になってきたからでもあった。
定期的な伝達と合わせて返事がもらえればとの思いだったが、予想に反し返事はすぐきた。
54: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 10:06:53.86 ID:ck9R+qDf0
以前の紗代子なら、単刀直入な指摘にショックを受けたかも知れない。
しかし今の彼女は、プロデューサーに全幅の信頼をおいていた。
そう、プロデューサーならそれをどうすればいいのかを、教えてくれるからだ。
紗代子「基礎的な体力か……うん!」
55: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 10:07:37.37 ID:ck9R+qDf0
「だめよ」
普段はノリの軽い母親が、珍しく強く紗代子に言う。
56: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 10:10:32.36 ID:ck9R+qDf0
紗代子の弟は項垂れる。
しかし時々……アイドル関係のことになると平静でいられなくなる面があるとはいえ、紗代子は彼にとっては優しい姉だ。
仕方ない。彼は、スニーカーを履く。
並んで走りながら、彼は姉に聞いてみる。
57: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 10:11:09.97 ID:ck9R+qDf0
紗代子「私には、すごいプロデューサーがついてるの。その人の言う通りにしていけば絶対トップアイドルになれるんだって」
「ホントかなあ……だいたい、なんでそんな人が姉ちゃんのプロデューサーになってくれたんだよ?」
紗代子「……なんでだろ?」
58: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 10:15:58.93 ID:ck9R+qDf0
最初は――そうこの時はそう言っていた弟も、次第に紗代子が揺るぎなく本気でそう思っている事を思い知る。
夜間のランニングは、その日だけにとどまらなかった。
時間こそ一時間ほどと決まっているが、次第に遠くまでランニングに行くようになる。そして、走る速度が上がっていく。
一週間で彼は、姉に頭を下げる。
59: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 10:16:35.81 ID:ck9R+qDf0
それを聞き、嬉しそうに母親が言う。
「いいわよ。お母さんが、買ってあげる」
紗代子「そんな……悪いよ。私が!」
60: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 10:17:06.92 ID:ck9R+qDf0
やはり体力をつけ始めた効果が現れたのか、プロデューサーからのメールにもこうあった。
『目に見えて体力の向上が見受けられるが、何か特別な事をしているのか?』
紗代子「プロデューサーに指摘されて、毎晩ランニングをしています。よくなかったでしょうか? と……どうかな」
61: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 10:17:39.52 ID:ck9R+qDf0
『身体は銀行のようなものだ。運動はローンであり、貸せば貸すほど利息が付いて返ってくる』
紗代子「そうなんだ。じゃあ……もっとランニングの時間、伸ばした方がいいのかな!?」
しかし続くメールの部分には、こう書かれていた。
62: ◆VHvaOH2b6w[saga]
2019/12/29(日) 10:18:08.14 ID:ck9R+qDf0
瑞希「経済の本ですか……父の仕事の関係で、そうしたものも確かに家にはありますが……高山さんのことですから、それもアイドルに関係することなのですか?」
紗代子「うん……これなんだけど、昨日のプロデューサーからのメール。なんとなくはわかるんだけど、どういうことかちゃんと理解したくて!」
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