53: ◆tues0FtkhQ[saga]
2019/12/25(水) 00:44:29.26 ID:yU6CR/tX0
◇
「はぁっ、はぁっ」
どれくらいの距離を走っただろう。早鐘を打つ心臓が、酸素を求めて苦しむ肺が、心の中を真っ白に塗りつぶしてくれる。それでも長くは保たなかった。走り続けられなくなると、どうしようもなく「気付いてしまったこと」が、心のキャンパスに絵の具を落としていく。
苦しくて足が上がらなくなる。疲れて腕が振れなくなる。息が続かなくて目を開ける。目の前の街は色のない世界だって分かった。どんどんと走るスピードが落ちていって、最後には止まってしまった。街の真ん中でぜえぜえと息をする。欠片もアイドルらしくはなかった。
落ち着いた呼吸と共に顔を上げる。世界はまだ色のないままだった。そしてきらりと何かが輝きを放つ。
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