渋谷凛「これは、そういう、必要な遠回り」
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9: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/12/08(日) 20:33:23.15 ID:clFucneV0

うそ。

なんとかなっちゃった。

少しの自失から我に返って、声が飛んできた方を見やる。

二十代前半くらい、だろうか。

それくらいの見た目のスーツ姿の男性が笑顔で立っていた。

当然、警察の人ではないだろう。

「なんとかなるもんだねぇ」

その男性が発した声が、さっきのものとは打って変わって雲がふわふわと浮かんでいるようなやわらかなものであったので、作り声であったことに気付く。

「はーい。お兄さんも災難でしたね。ほい、逃げましょう。ちなみに私は警察ではないので、通報するなら交番に早めに行った方がいいです」

私の前を素通りして、絡まれていた人に声をかけ、立ち去ることを促す。

そのあとに、私の方に振り返って「それでは、あの二人が戻ってきたら怖いので、とりあえず逃げましょう」と言った。

わけがわからないまま、「こっち!」と彼が言うままに、駆ける。

革靴とスーツという、およそ運動には適していない格好にもかかわらず、それなりの速度でぐんぐん進んでいくものだから、私もついていくのに必死だ。



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