渋谷凛「これは、そういう、必要な遠回り」
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38: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/12/08(日) 21:52:43.23 ID:clFucneV0

「学校の先生だって、卒業しても先生って呼んじゃうし、別におかしいことないでしょ?」

「まぁ、その理屈で言えばそうか」

「そうだよ」

「……でも、さ。実は俺、もうプロデューサーやってないんだよね」

「うん。知ってる」

「え」

「実は、少し前に会いに行ってさ。そしたら退職してる、なんて言われて」

「……バレちゃってたか」

「半年くらい連絡ないし、忘れられちゃったのかと思った」

「まさか。忘れれられるわけ」

「……じゃあ、連絡してこなかったのは、何も言わずに消えちゃったのは理由があるんだ」

「まぁ、あるにはある。でも、聞いたら笑うよ」

「……笑わない、とは約束できないけど、聞かせてよ。プロデューサーが私にしたことを思えば、それくらいの権利はあるんじゃないかな」

「俺がしたこと?」

「ふらっと消えたでしょ。何も言わず。プロデューサー、さっき言ったよね。私の調子が歩き方とか、表情とかでわかる、って」

「うん」

「そんな相手が、急に連絡取れなくなって、何も言わず消えちゃったら心配しない?」

「…………それは、その、そうだなぁ。申し訳ないことをしました」

「わかればいいよ。それじゃあ、まずはさ、理由を教えてよ」

「んー。幼稚な理由だよ。たださ、やっぱりどこに行っても何をするにしても、俺は渋谷凛の元担当プロデューサーとして見られて」

「うん」

「悪い意味でそう言われていたわけじゃないのは、わかってる。でも、どうしてもそういう目からは逃れられないわけで。新しく担当する子も俺を、渋谷凛を担当していた存在として、どうしても見ちゃうだろ」

「……そうだね」

「凛は知ってると思うんだけど、別に俺は特別な能力もなければ、天才的な指導センスもないんだ。ただただ、そのときそのときにできることを考えて、一つ一つ積み上げていく。それだけ」

「……うん」

「もちろん、凛をプロデュースしたっていう肩書きを利用して、少しの下駄は履かせてあげられるし、そうすることもあった。でもやっぱり、そこからは本人の能力と、努力と、時の運なんだよね」

言い終わって彼は一瞬だけ疲れた表情を浮かべて、さらに続ける。

「それを理解してくれる子もいたし、してくれない子もいた。失望する子もいれば、そこで一念発起する子もいた。そして、成功していく子もいたし、残念ながら俺の力が及ばずにあまり良い景色を見せてあげられなかった子も、いた。……そういう、繰り返しなんだなぁ、と気付いて虚しさを覚えたときに、思い出すのは凛といた頃のことばかりで、それで、疲れたー! って」

あはは、と笑って「幻滅した?」と彼が言う。



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