渋谷凛「これは、そういう、必要な遠回り」
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32: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/12/08(日) 21:43:37.78 ID:clFucneV0

■ 四章 結露

レッスンスタジオを訪問した翌日、いつもどおりの時間に目が覚めた私を襲ったのは電撃のような痛みだった。

寝起きの頭であることも相まって、初めはわけがわからず妙な焦りを覚えたが、次第に思考が澄んでいけば、それが筋肉痛であると気付く。

自身の鈍り具合にほとほと呆れながら、ぴりりと痛む腹筋に鞭を打って上体を起こす。

腕を伸ばせばこちらも同様に二の腕の辺りがずしりと重く、足に至っては満遍なく痛い。

毎日ハナコと軽くジョギングのような運動はしているし、花屋のお仕事を手伝う中でそれなりに重いものを運ぶこともあるから、運動不足ではないと考えていたが、どうやら甘かったらしい。

というよりも、アイドルをやっていたときの自分があれほどの激しいダンスを含むレッスンを連日行い、お仕事もこなし、暇があれば友人と遊んだり家の手伝いをしていたりしたのだから、我ながら頭がおかしいのではないかと思ってしまう。

まぁ、当時の私はレッスンの後は入念にクールダウンを行っていたし、筋肉痛を防ぐためにアミノ酸を摂取するなど徹底的に管理をしていたのだから、比べてもあまり意味はないのだけれど。

でも、私、すごかったんだ。

なんていうどうでもいい自画自賛と、今の私との途方もない差に絶望しながら、床に置いてある犬用のベッドで眠っているハナコに声をかける。

ハナコはそれを受けて、ぴょんと起き上がりもう既に扉の前で私が開けるのを待っている。

気が早いなぁ。

小さなしっぽをぱたぱたと振って、扉と私とを交互に見る仕草はいつ見てもかわいさが極まっていると思うのだった。

さぁ、今日も頑張ろう。

ぐっ、と力を込めて立ち上がり壁に貼ってあるカレンダーの昨日の日付にバツをつける。

戦いはまだ始まったばかり。

ハナコの散歩と朝ごはんを終えたら、第二ラウンドといこう。



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