渋谷凛「これは、そういう、必要な遠回り」
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27: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2019/12/08(日) 21:35:52.54 ID:clFucneV0

「ぴったり、です」

「よかったー。じゃあ、行きましょう」

どこに、と聞きたかったけれど、その答えはわかりきっていたので、やめる。

手を引かれるままに廊下へ出て、やはりというかなんというか、先ほどのレッスンルームに連れていかれた。

「はい。休憩は終わり! この人は、特別ゲスト。滅多にないことだから、みんな盗める技術は盗んでね」

慶さんが両の手を鳴らして注目を集めれば、彼女の生徒であろう女の子二人は無言で立ち上がり背筋を伸ばす。

その光景だけで、慶さんがもう一流のトレーナーであることが察せられた。

「あ、あの。もしかして……渋谷凛、さんですか?」

私から見て右側の、明るい髪色の女の子がおそるおそる手を挙げ、口を開く。

左側の黒髪でショートヘアの女の子が小声で「ちょっと」と制しているのがなんだか面白い。

「うん。びっくり、したかな。二人ともシンデレラプロダクションの子だよね?」

「え、っと。はい」

「特別ゲストらしくて……というのも、私はさっき偶然来ただけなんだけど、まぁせっかくだし何か力になれるなら、お手伝いさせてもらってもいいかな」

「そんな、えっ、もったいないくらいです」

「ふふ、そんなに恐縮しなくていいよ。私、もう芸能人じゃないし」

「でも、渋谷凛さんは憧れで、雲の上の人で」

何を言っても恐縮しきりの二人は初々しくてかわいいけれど、慶さんはそれだけのために私を招き入れたわけではないだろう。

「それで慶さん。私は何したらいいんですか?」

「あ、何の説明もしてなかったよね。ごめんなさい。えー、っと連れてきといて今更なんだけど、凛ちゃんさっきの曲、まだ踊れる?」

「……たぶん」

「よし、じゃあこうしましょう!」

それから、慶さんが言ったことをまとめると、こうだ。

私を中央にして、その両翼に二人を立たせ、慶さんは通常どおり指示を出す。

らしい。

何か提案ができるわけでもないので、私もそれに従う。

軽く息を吐いて、全神経を研ぎ澄ませる。

正面の大鏡に映し出された自身の姿を見据え、慶さんの手によって音楽が始まるのを待った。



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