武内P「私をドキドキさせたい?」小梅「……うん」
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7: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/12/08(日) 17:47:00.25 ID:obxw+A5Q0
「ううん、まったく」

「そ、そうなんだ。でもホラ! くっつくのは変なんじゃない?」

「変……?」


プロデューサーさんにくっつくのが変?


「美嘉さんは……タイラントやレッドピラミッドシングに、思いっきり体重をかけて甘えたいって思ったことが無いの?」

「……うん、無いから。白くて大きな犬に思いっきり抱きつきたいってなら考えたことあるけど、それは無いから」

「い、意外」

「それは私のほうだよぉ小梅ちゃん」


なんだか泣き出しそうな声と共に抱きしめられる。
深刻なレベルで心配されてたことに、ようやく実感がわいてきた。


「……ごめんなさい、美嘉さん」

「いいの、謝らなくて。誰だって人とちょっと変わったところは一つや二つはあるけど、そのことで謝る必要なんかないんだから★ あ、でもね!」


美嘉さんは抱きしめるのを止めると、私の肩に手を乗せたまま真剣な目を向けてくる。


「小梅ちゃんはもう年頃の女の子なんだから、男の人に抱きつくとかそういうことを気軽にやっちゃダメなんだよ?」

「……もしかして、プロデューサーさんが困ってた理由って」

「ふーん、困ってたんだ。まあ最低限の良識は持ってるわけか」

「あの……美嘉さん。ひょっとしてプロデューサーさんのこと、嫌い?」


私や幸子ちゃんにはすごく優しいのに、プロデューサーさんの話になると妙にトゲがあるような気がする。
部屋を出るときにプロデューサーさんを睨んだのも、気のせいじゃないみたい。


「嫌いっていうか……信用できないというか……もっとしっかりして欲しい? ううん、しっかりしてるんだから堂々として欲しい――かな?」


困ったようなその笑い方は、見とれてしまうぐらい美しくて、他人を慈しむことができる人しかできないものに思えた。


「アイツは……多分小梅ちゃんも気づいていることもあるだろうけど、気づいていないこともたくさんあるぐらい、アタシたちのために入念に準備してて――それを腹立たしいことに、ほとんどアタシたちに説明しないのよ」

「み、美嘉さん……?」


女神のようなほほ笑みから一転。
私の肩に置く手に、思いっきり力が込められるんじゃないかと心配になる不穏な気配を漂わせながら、美嘉さんはこれまでこらえていたんだろうプロデューサーさんへの不満を一気に口に出し始めた。


「別に自分の仕事を一から説明して自慢しろだなんて言わないわよ? でもしっかり裏方の仕事をしているのを見せて、アタシたちに安心させるのも仕事でしょあの口下手男は! 年頃の女の子の扱いが下手すぎるでしょ! 茜ちゃんは思いっきり突っ走るタイプだし幸子ちゃんは自分はカワイイからって自己暗示かけているし小梅ちゃんはアタシが見ているけど、一歩間違えればどうなるのかわかんないのよ年頃の女の子は! アタシたちの事は楓さんと二人で飲んでいる時に聞いているらしいけど――っていうかアイツ楓さんにはしっかり時間割いているじゃん! 無理矢理だけど! 楓さんに居酒屋に引きずられてだけど! 何が腹立たしいって聞いてよ小梅ちゃん! この前のヘレンさんのライブで前座したけど、アタシってばガッチガチに緊張している幸子ちゃんにいつもよりちょっと多く話しかけるだけのアイツに頭にきて文句言ったのよ! でもね……ライブが終わってからヘレンさんが教えてくれたんだけど、アタシと幸子ちゃんが気負っているから、一言二言で結構ですから話しかけて緊張をほぐしてもらえませんかって……あのでっかい体を折り曲げて丁寧にお願いしてたそうなのよ! 実際ヘレンさんの世界パワーで緊張とかどっかいって、ダンスに集中できたよ!? アイツがアタシたちの異常に気づいて、適切な対処をしてくれたおかげでね!? そんなアイツにアタシは文句言ってたの! 謝りたいけどタイミングはわからなくて、でも謝らなきゃって部屋に入ったら今度は小梅ちゃんをはべらせててっ――もう、もうアイツは!! 勘違いさせんな! しっかり仕事してるんだから自信もって堂々としてなさい! 信用していい奴だってのは頭でわかってるんだけど、こんなんじゃ信用できないじゃん! そもそもこっちは信用じゃなくて信頼したいのに〜〜〜っ」


………………………なんて、情念。 
まさか出会って三週間で、こんなにもプロデューサーさんへの不満を募らせていただなんて。

でも、これって――


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