8: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 17:27:33.96 ID:86FQdztyO
ぴぴぴぴっ、ぴぴぴぴっ
目覚ましのアラームと同時、俺は目を開けた。
なんだか、長い夢を見ていたような気がする。
硬く握り締めた手を開けば、インフルエンザに罹った時のような汗をかいていた。
相当な力がこもっていたのだろう、指の跡が赤くクッキリと残っている。
「…………はぁ」
朝からこんなんでは気が滅入る。
カーテンを開けて部屋に朝日を取り込み、気持ちをリフレッシュ。
窓の外では木々が揺れ、四月の朝を表していた。
少し窓を開けて思いの外低い気温に驚き、一瞬でカーテンごと閉める。
コンコン
それと同時、部屋の扉がノックされた。
今日も、起こしに来てくれたようだ。
「はーい」
「あ、起きてますか? 兄さん」
ガチャ
「……おはよう、千雪」
「おはようございます、兄さん。今日はお寝坊さんじゃないんですね」
「何時迄も千雪に頼ってばっかりって訳にはいかないからな」
ふふ、と微笑む千雪。
もう少し俺が寝ぼけていれば、天使と見間違えていたかもしれない。
「朝ご飯、もう準備出来てますから」
「そうか、いつもありがとな」
開けられた扉から、良い香りが漂っていた。
焼き魚と味噌汁だろうか。
朝ご飯は一日の元気の源。
しっかり食べて、英気を養おう。
「そうですよ、兄さん。前は食べてなかったって聞いて驚きましたから」
「今では食べないとお昼まで身体が保たなくなっちゃったからな」
「甘奈ちゃんと甜花ちゃんも待ってますよ?」
「じゃあ、急がないとな」
千雪が一階に降りて行った後、ぱっぱと着替えて顔を洗い歯を磨く。
妹達の前で見苦しい姿を見せる訳にはいかない。
「ん……?」
階段を降りる前にふと自分の部屋を覗けば、机の上に書類が出ていた。
昨夜書類と格闘して、そのまま片付けずに眠ってしまったのだろう。
全く、きちんと片付けないと千雪にお説教されてしまう。
怒った千雪も可愛いし、それも悪くないかもしれない、なんて考えながら一応机の端に整える。
「……あれ、メモ……?」
トントンと書類の端を整えていると、書類の合間から一枚のメモ用紙が落ちてきた。
そこには俺の文字で、一文だけ。
60Res/110.14 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20