7: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 17:26:57.57 ID:86FQdztyO
「ふふ、兄さん。そんなに慌ててどうしたんですか?」
「…………え……」
目を疑った。
俺は、リビングに居た。
目の前には先程まで俺が着いていた食卓。
笑顔で俺を迎える三人の妹。
「なんだ、これ……」
なんだ? 何が起きた?
目の前で起こっている現実が余りにも非現実的過ぎる。
そんな筈は無い。
だって俺は、玄関の扉を開けたのだから。
「もー、お兄ちゃんってばおてんばなんだから」
「にへへ……お兄ちゃんも、お昼寝に全力……」
当然の様に笑顔な妹達が、とても気味が悪い。
何故三人は、そんなに幸せそうなんだ?
俺はこんなにも焦って、不安なのに。
三人が大切に思ってくれているであろう俺が、家から出ようとしたのに。
そう思って手元を見れば、物凄い力で俺はリビングのドアノブを握っていた。
「うわぁぁぁあっ!!」
弾かれる様に俺はドアノブから手を離し、再び玄関へと向かった。
今のは俺の気が動転していただけだ。
こんなおかしい事が起きる筈が無い。
焦りで煩いくらいに響く鼓動を抑え付け、もう一度俺は玄関へと向かう。
手元を確認すれば、俺はきちんと玄関のドアノブを握っている。
「頼む……っ!!」
扉を開ける。
きっと、大丈夫だ。
今度はもう、気も動転していない。
あって良い筈が無い。
扉の向こう側からの光で、視界が真っ白になる。
これで俺は、外に出られ……
「お帰り、お兄ちゃんっ!」
「お、お帰りなさい……お、お兄ちゃん……っ!」
「ふふ。お帰りなさい、兄さん」
俺は、リビングのドアノブを握っていた。
三人の妹が、同時に俺へと微笑み掛ける。
心底幸せそうに、この幸せに微塵の邪魔も挟み込ませないというかの様に。
「……はは、ただいま」
俺は、もう考える事をやめた。
俺も三人と一緒に、幸せになろう。
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