【シャニマス】アルストロメリアと幸せな日常
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54: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 18:46:04.29 ID:86FQdztyO


「……俺、もう行くよ。帰らないといけない場所があるんだ」

 もう終わりにするんだ。

「え、お兄ちゃんどっか行っちゃうの? やだよ……」

「そんな……甜花のお料理、本当は美味しくなかったから……?」

「違うよ、甜花。甜花の料理はすごく美味しかった、本当だ」

 でも、そういう事じゃないんだ。
 俺がみんなの事を嫌いになったとか、そういう話じゃないんだ。

「……こら、二人とも? 兄さんを困らせちゃダメでしょ?」

 そう、二人の妹を諫める千雪。
 それから、優しい眼差しで俺を見つめてきた。

 優しさで縛り付ける様な、そんな感覚を覚えた。

「兄さん……どうしても、行ってしまうんですか?」

 ここで首を横に振れば、今の会話は全て無かった事にしてくれるのだろう。
 ここで首を縦に振れば、また誰かが犠牲になってしまうかもしれない。

「甘奈ちゃんも甜花ちゃんも、こんなに悲しんでいるのに? それに、私だって……」

 甜花と甘奈と、それから千雪と。
 六つの視線を浴びて、心が折れそうになる。
 でも、それだけだ。
 ここで諦める訳にはいかない。

 信じるんだ、皆んなを。

「……少し、話を聞いて欲しい。俺の、夢の話だ」

 それから俺は、とあるアイドル事務所の話をした。

 283プロの日常を。
 俺と、社長と、はづきさんと。
 オーディションで入って来たアイドルと。
 スカウトで入って来たアイドルと。
 
 そのみんなが、みんなで努力して。
 力を合わせて作り上げた、辿り着いた場所の話。
 
 まだまだこの先の道も長いけれど、それでも彼女達なら辿り着けると。
 そんな彼女達を、全力で支えてあげたいと願い続けてひたすら走り続けて来た俺の。
 これからもその事務所で、みんなと共に夢を叶え続けたい、と。
 そんな、俺の夢の話を。
 
 三人は、黙って聞き続けてくれた。
 何となくだけれど、夢見てくれたと思う。
 自分達がアイドルになる夢を。
 三人でユニットを組んで、輝いてゆく世界を。

「……兄さんにとって、とっても大切な夢なんですね」
 
「当たり前だ。俺にとって……」
 
 そんな大切な夢を、何度も忘れて来た。
 諦めた事だってあった。

「……所詮夢の話だ。笑ってくれても構わない」
 
 それでも。
 もう一度。



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