47: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 18:42:26.60 ID:86FQdztyO
『……ふーん、なるほどね。それであんたは家から出られなくなっちゃった、と』
「……あぁ。相変わらず理解が早くて助かるよ」
『相変わらずって……ま、あんたはふゆとこの会話を何回もしてるんでしょうけど……』
「……やっぱり、信じてくれるんだな」
『……信じるわよ。あんたがそんなに必死なの、初めてだったし……泣いてるのも……』
冬優子に状況を説明しつつ、俺もこの数年間の今日を振り返る。
沢山の事があった。
その殆ど全てが、同じだった。
違う事をしていたのは、途中のほんの数日だけだった。
『あっちょっと待ってあさひが窓から出ようとしてる! ちょっとあさひ! それでハトに乗れるのは真乃だけだから! 馬鹿な事してないで外走り回ってなさい!』
いや、正確には他にも何日かはあった。
それも、この長い今日の中ではほんの一瞬だが。
ぐちゃぐちゃになった思考から垂れ流される妄言に、それでも冬優子は最後まで聞いてくれた。
思い出したく無かった事を記憶に叩き込まれたせいで発狂しかけたが、それでも落ち着けたのは冬優子のお陰だ。
『っふぅ……あさひ達には外に出てって貰ったわよ。それで?』
「…………どうすれば良いんだろうな、俺……」
そして、ここからは弱音だ。
「……出られないんだよ、どうやっても」
沢山の方法を試していた。
その全てが失敗に終わっていた。
むしろ状況が悪くなる事だってあった。
だからこそ、過去の俺は諦めたのだろう。
冬優子に相談したのもこれが初めてではない。
けれど、それで状況が好転した事はなかった。
だから、久しぶりに彼女の声を聞いて喜びはすれど諦めは変わらなかった。
だって、どうせ無理なのだから。
『……何諦めてんのよ、あんたらしくないわね。どーせやり直せるんだから何回挑んだって良いじゃない』
「……どうせ、やり直せる……?」
ああ、そうだ。
かつての俺も同じ事を考えていた。
……だからって。
だからって、何度も挑める訳じゃないんだよ……!
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