38: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 18:37:14.81 ID:86FQdztyO
「っ!」
どれくらいの時間が経ったのだろう。
気が付けば俺は、ベッドの蓋で泣き崩れていた。
怒りに狂って精神がおかしくなっていたのか、起きてから今までの記憶があやふやで。
荒い息を整えながら、のっそりと立ち上がる。
「……………ぁ…………」
そして、全てを思い出した。
ベッドに力なく横たわる、白と赤の千雪を見て。
シーツの赤は、かなりの広範囲に広がっている。
今更になって、俺は自分がしでかした事に対して恐怖を覚えた。
「……ち……、ゆき……なぁおい、千雪……返事してくれよ……」
ぴくり、と。
千雪の指先が動いた。
「っ! 良かった、千雪!!」
「……ふふ……ふ、ふふふ…………ふふふふふふっっっ……」
千雪は、静かに笑っていた。
良かった、生きてる!
「本当にすまなかった千雪! 俺は」
「ぁ……にい、さ…………っぁ……ぁぁぁあ…………ぁうぁぁっっ……っ!」
俺の姿を見て、それから。
千雪は、身体を痙攣させた。
焦点の合わない目からはボロボロと涙を流し、元より細かった呼吸が覚束無くなる。
それでも、少しでも俺から遠ざかろうとする思いだけは伝わってきた。
「…………千雪……」
「いや…………どう……して……信、じて………ぁ……っ!」
次に千雪が出る行動に、予測がついてしまった。
信じていた、大切な人だと思っていた俺に裏切られて。
殴られて、殺されかけて、犯されて、踏み躙られて。
そんな彼女が意識を取り戻したじてんで、縛り付けておくべきだった。
「……やめろ……悪かった千雪……だから……やめ……」
人を呪わば穴二つ。
もっと分かりやすく言えば、人にされて嫌な事はやめましょう、だ。
分かっていた事じゃないか、俺は。
彼女は『やめろ』と言ってやめる人間ではないと言うことを、嫌ほど。
「……さよ……なら…………兄さん……」
そうして、彼女は。
口を閉じると同時、自らの命に幕を下ろした。
「千雪ぃぃぃいいいぃぃぃぃぃっっっ!!!」
叫んだ所で、戻って来ない。
そんな事は分かっていても、止める事は出来なかった。
俺が殺した。
俺が殺した様なものじゃないか。
それも、ただ命を奪っただけじゃない。
彼女の大切なものを全て奪った上で、だ。
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