34: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 18:35:17.52 ID:86FQdztyO
「なんて……ふふ、大丈夫です兄さん。私、甘奈ちゃんから聞きましたから」
ずぶり
千雪が、甘奈の腹部にある黒い取手を抜き取った。
分かってはいた事である。
黒の先には、銀色の刃が赤と黒の粘度の高い液体で覆われて。
「゛っっっっ!! っん゛ん゛ん゛ん゛っっっっ!!」
バタンッ、ドンッっと甘奈の身体が跳ねる。
ビクンビクンと足が痙攣している。
ボロボロと二つの瞳から、身体中の水分全てが抜けてしまうんじゃないかと言う勢いで涙が流れる。
なのに俺は、庇う事すら出来なくて……
「……やめろ……俺が悪かった、千雪……もうやめてくれ……!!!!」
涙が溢れる。
俺のせいで。
俺が甘奈を巻き込んでしまったせいで。
……全部、俺のせいで……
「うふふ、やめませんっ」
イタズラっ子の様に。
千雪は、もう一度手に持った刃を甘奈に振り下ろした。
「この幸せを捨てたいだなんて」
ズブッ
「戻りたいだなんて」
ズブッ
「そんな哀しい事、考えないで下さい」
ズブッ
「……分かってくれましたか?」
ズブッ、ズブッ、ズブッ、ズブッ
出来の悪い兄に説教する様に。
困った様に、眉を窄めて。
それでも笑顔で。
何度も、何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
「ーーーー……ぁ……」
甘奈の身体は、ついに跳ねる事すら無くなった。
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