33: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/12/04(水) 18:34:41.85 ID:86FQdztyO
「見てあげて下さい兄さん。甘奈ちゃん、赤い下着もとっても似合うと思うの」
「っっっっ! 千雪ぃぁぁぁぁぁあっっっ!!」
腹部には、黒い取手の様なもの『だけ』が……
「…………ゔ……ん゛ん゛っ…………っ!!」
正直な話、俺は甘く見ていた。
千雪にバレた所で、説教されたりメモを破られるなりして終わると思っていた。
想像出来る訳がないだろう。
彼女が、ここまで本気だなんて……
…………なんでだよ……
なんで甘奈が、こんな目に遭わなきゃいけないんだよ……
ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!
よりにもよってなんで千雪が! 甘奈を!!!
「……甘奈ちゃん、私達の幸せを壊そうとしたんです」
倒れた俺と甘奈の視線が、床から高さ数センチの位置でぶつかった。
見間違えかもしれない。
俺の都合の良い勘違いかもしれない。
けれど痛みと恐怖に押し潰されそうになりながらも、甘奈のその瞳は俺の知っているもので。
ーーごめんね、お兄ちゃん。
身体がゆっくりとしか動かない。
長時間座っていて足が痺れた時の様な、スローで這い蹲る様な動きしか出来なかった。
目の前で甘奈が苦しんでいるのに、俺は彼女に駆け寄る事すら出来なかった。
駆け寄った処で俺に何が出来るのかと問われれば答えられないが、そんな事を冷静に考える余裕も無い。
「……甘奈……ごめん…………」
「ねえ、兄さん。私は四人で幸せでいたいだけなの。甘奈ちゃんと、甜花ちゃんと、私と、それから兄さん。きっと兄さんもそれを望んでくれてるって信じてるわ」
「…………こんな事をして、何言ってるんだ千雪」
「まぁ……もしかして、兄さんが甘奈ちゃんにお願いしたんですか?」
そんな千雪は、笑っていた。
嘲る様な、試す様な。
目の前で大切な妹が、仲間が、倒れているのに。
真っ赤に染まったカーペットの上で、吐きそうになる程生臭い部屋の中で。
それでも千雪は、笑顔だった。
「だったら、そんな事はしないで欲しいの……これからの事、ですから」
……今後俺が、甘奈や甜花を説得して味方に付ける様な事があれば。
また、こんな結末になっちゃいますよ? と。
例え自分の記憶がリセットされても、自分の思考回路的に同じ選択をする、と。
そう、千雪は言っているのだろう。
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